大震災の影響は限定的 財政健全化の努力継続を--OECD事務総長 アンヘル・グリア
--復興財源が求められるため、さらなる財政悪化が避けられません。日本の信認低下につながるとの懸念もありますが、いかがですか。
私はそうは思いません。世界は日本の財政拡大がやむをえないこと、自然の成り行きであることを理解しています。そもそも、債務悪化の問題は、大震災によってもたらされたものではありません。3・11の復興に伴う財政拡大により、追加の債務負担が必要になっているのです。
われわれは阪神・淡路大震災など過去の震災の経験を基に、日本はGDPの1・2%に当たる財政支出が必要と想定しています。当然、こうした財政拡大は、日本の財政再建を遅らせることになるでしょう。
重要なことは、財政再建という大きな課題を忘れず、そのための努力を続けることです。阪神・淡路大震災のとき、日本の財政赤字はGDPの5%、累積債務は86%でしたが、現在、財政赤字はGDPの9%、累積赤字は200%にまで膨らんでいます。日本の財政は、以前ほど融通の利く状態にはないのです。
--OECDは、財政健全化のために日本が消費税率を20%まで引き上げることを提言しています。
日本の消費税率はとても低い。欧州諸国の消費税率は16%から25%の範囲にありますし、OECD加盟34カ国の平均消費税率は18%です。消費税がない米国を除けば、日本の消費税率5%は加盟国の中でおそらく最低の数字です。
われわれは一般的に、労働者や企業に対しては減税で雇用や投資を促進する一方、消費税や資産課税、グリーン税(環境税)を引き上げるほうがよいと考えています。今、日本は復興のために国民が一丸となって努力していますし、復興資金捻出のための追加負担を受け入れる準備ができています。消費税増税も財源の選択肢の一つとなるでしょう。
日本は原発から手を引くべきではない
--日本では原子力発電所への不安が広がっています。原発に対する経済面や環境面でのOECDの基本スタンスはどうなっていますか。
まずは今回の事故から得たあらゆる教訓を学ぶべきです。原発の設備、設計、建設から、自然災害対策まですべてに及ぶ教訓を統合すべきです。しかし、原発から手を引くべきではありません。経済的、技術的な観点からいって、原発は合理的かつ適切な選択肢の一つです。