中学1年生のB子さんは、クラス内で仲間外れにされ、不登校になってしまいました。
仲間外れにされたきっかけは、B子さんが「キモい」という言葉をよく使っていたからです。B子さんにとっては、否定的な反応=「キモい」でした。
「前髪切りすぎちゃった、最悪」「あはは、キモ」
「来年マラソン大会あるらしいよ」「キモい」
という感じで、何でも「キモい」が当たり前でした。お母さんは心配して「キモいって傷つく言葉だからやめなさい」と何度か注意したそうです。でも、小学校ではB子さんのキャラクターとして定着しており、何も問題はなかったので本人は直そうと思わなかったのでしょう。
中学校に入ってクラスの大半が知らない子になると、B子さんの「キモい」は受け入れられなかったようです。「あいつすぐキモっていうからウザい」と言われて無視されるようになり、それがショックで学校へ行けなくなってしまったのでした。
B子さんは「キモい」という言葉が人を傷つけたり、不快にさせるということに無頓着でした。これはそういう言葉を使った本人が不登校になってしまった事例ですが、もちろん逆の例もあります。軽い気持ちで言った「キモい」「ウザい」「死ね」などの言葉が相手を深く傷つけ、相手が学校に来なくなってしまったという例です。そして相手から「いじめられた」と言われ、驚く子も多いと聞きます。「そんなつもりはなかった」のです。
このように、特定のコミュニティー内ではセーフでも、新たな人間関係の中ではアウトになることはよくあります。うまく使い分けられればいいのですが、語彙が少なければ使い分けもままなりません。
大事なのは言葉を選ぶ力
「ヤバい」「ウザい」などの言葉自体が悪いわけではないでしょう。便利で言いやすいので、大人も使うことがあると思います。むしろ、大人が使っているのを見て子どもたちがマネしている面もあるのではないでしょうか。今回の調査では「ユーチューバーの言葉をマネしている」というコメントが複数見られました。
ある程度良識のある大人なら、使っていい場とそうでない場とで言葉をちゃんと使い分けているはずですが、子どもにはそれがわかりません。問題は、子どもたちが「時と場合を選ばずに、何でもこの言葉ですませてしまう」という点です。調査結果にも、事例にもそれがよく表れていると思います。
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