就寝中の冷房つけっぱなし「電気代は高い」の誤解 寝苦しい夜に快眠に導く「エアコン使い」のコツ

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私たちの体には、ある程度であれば暑さで体温が上がっても、自然と体温調節が行われて、適切な体温に戻すしくみが備わっている。例えば暑いときには汗をかくが、それは汗の気化熱によって熱が外気に逃げるためだ。

寝苦しいとどうしても睡眠不足になりがちだが、だからこそ体感温度を下げ、しっかり眠りたいところだ。森田さんが寝室の湿度の調整以外に勧めるのは「入浴」だ。

「暑い夏にお風呂というのは矛盾しているようですが、お風呂に入ってしっかり体を温めると、深部体温が上がります。また、体表近くの毛細血管が開いて、体温が放出されやすくなるので、結果的に体温が下がります。実は、このように体温が急激に下がるときに眠気が強くなります」

そして、寝ている間にも汗をかいて体温を調整しているので、寝る前にコップ1杯の水を飲んだほうがいいとのことだ。

入浴は「熱めの湯・就寝1時間半前」

入浴の温度も関係するようで、こんなデータもある。

1996年にハーバード大学マックリーン病院で行われた研究では、60~72歳の不眠症の女性9人に、就寝の1時間半前に40~40.5℃と、37.5~38.5℃の温度の湯にそれぞれ30分入浴してもらい、眠ったときの脳波を計ったところ、前者の熱めの湯に入った人のほうが、夜間に起きることも少なく、深い睡眠が増えたという。

単に入浴するのではなく熱めの湯につかることが大事のようだ。

「大人は就寝1時間半前の入浴がおすすめ。子どもは体格が小さいので、大人より体温が上がりやすく下がりやすい傾向にあります。子どもや赤ちゃんなら、湯温は38℃前後とぬるめにし、つかる時間も数分で十分です。入浴後に体温が下がるまでの時間も大人より短いので、お風呂から上がって30分から1時間程度で寝かせましょう。大人は、熱すぎる湯温だと交感神経が優位になり、眠りにくくなることがあるので、注意してください」(森田さん)

また、まだ日が長めの今の時期は、早朝から寝室が明るくなることが多い。森田さんによれば「光は睡眠を浅くする効果があり、明るい寝室で眠ると目を覚ましやすくなるので、要注意」という。

古いデータになるが、1981年に奈良女子大学が行った研究では、3人の女性にさまざまな暗さに調節した部屋で寝てもらい、睡眠中の脳波を測定したところ、寝室の明るさが30ルクス以上になると、特に起床前2時間の睡眠が浅くなることが明らかになった。

2013年に韓国で行われた研究でも、4人の女性被験者に40ルクスのライトをつけていない場合とつけた場合とで睡眠の深さを測定。結果、浅い睡眠がそれぞれ8.6%と10.2%、深い睡眠がそれぞれ15.1%と11.3%となり、部屋が明るいほど睡眠が浅くなることがわかった。

「30ルクスというのは物影がうっすら見える程度、間接照明がついた薄暗い寝室くらいの明るさです。日当たりの良い部屋だと、遮光カーテンでも朝方にはそのくらいの明るさにはなってしまう。遮光カーテンを使い、かつカーテンの上下左右から漏れる光もふさぐようにしましょう。完全遮光の窓用シートがおすすめです」(森田さん)

暑さで失われ気味な体力を復活させるためにも、さまざまな工夫で安眠を得たいものだ。ぜひ試してもらいたい。

一木 悠造 フリーライター

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いちき ゆうぞう / Yuzo Ichiki

ノンフィクションの現場で取材・執筆を重ねてきたフリーライター。

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