なぜ平等で格差が小さい社会ほど幸福度が高いか 「親ガチャ社会」の日本に未来がない納得理由

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社会における平等度あるいは格差の度合いと、その社会に生きる人々の幸福度ないしウェルビーイングの度合いはどのような関係にあるのだろうか。

これは社会のあり方というものを考えるにあたっての基本的なテーマと言えるが、まずはいくつかの事実関係の確認から始めてみたい。

しばらく前から、人々の(主観的)幸福度の国際比較や、それに基づくランキングがさまざまな形で公表されているが、概して北欧諸国がそうした比較において上位に位置していることはしばしば認知されてきた。たとえば、国連の関連組織である「持続可能な発展ソリューションネットワーク(SDSN)」が数年前から毎年公表している「世界幸福報告(World Happiness Report)の2023年版では、幸福度の国際比較においてフィンランド(1位)、デンマーク(2位)、アイスランド(3位)、スウェーデン(6位)、ノルウェー(7位)という具合に、北欧諸国が上位に名を連ねている(ちなみに日本は47位)。

社会における高い「平等」を実現してきた北欧諸国

一方、北欧諸国と言えば、その“高福祉・高負担”型の「福祉国家」政策において広く知られており、その帰結として、社会における高い「平等」を実現してきているのである。

この点に関して以下の図を見ていただきたい。これはジニ係数という、経済格差の度合いを表す基本指標を国際比較したもので、数字が大きいほど経済格差が大きく、数字が小さいほど経済格差が小さい(=平等度が高い)ことを示している。

これを見ると、ノルウェー、フィンランド、デンマーク、スウェーデンという北欧諸国が図の最も左に位置しており、すなわち平等度が最も高い国々であることがわかる。他の国々についても概観すると、大きな傾向として、それに次ぐのが(オーストリア、ドイツ、フランスといった)「大陸ヨーロッパ」諸国であり、それ以降、次第に経済格差が大きい国々として、カナダ、オーストラリアなどのアングロ・サクソン諸国そしてギリシャ、ポルトガル、イタリアなどの南欧諸国が位置し、その次に日本、イギリスと続き、最も格差が大きいのがアメリカとなっている。

こうした“国の並び”は、私のような社会保障を専門領域の一つとしてきた人間にとっては馴染み深いもので、これらはその国の社会保障の充実度と大きく関連しているのである。実際、先進諸国の社会保障は、北欧のようなグループ(税を中心とする厚い社会保障)、大陸ヨーロッパのグループ(社会保険中心の社会保障)、南欧グループ(家族への依存が大)、イギリス・アメリカのようなグループ(小さな政府ないし市場志向)に類型化できる(こうした点については拙著『生命の政治学――福祉国家・エコロジー・生命倫理』参照)。 

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