米国の原発事情【上】 全米104カ所の原発は安全か? 原子力規制委員会(NRC)による安全性チェックのゆくえ
ホワイトハウスは、福島原発事故の直後から、米国での原発利用拡大へ前向きな姿勢を重ねて強調した。3月31日、オバマ大統領はジョージタウン大学で「原発は、安全でさえあれば、気候変動問題の解決に大いに寄与する」と述べている。
大統領に就任当初、地球温暖化問題に対しては原発以外の太陽光、風力など再生可能エネルギーを強調していたが、09年のクリーン・エネルギー法案の下院審議を通じて、しだいに国家エネルギー戦略に原発を取り込むようになった。地球温暖化問題の解決策として、既存の太陽光、風力などが果たせる役割は小さく、両方合わせても、電力供給量のわずか2%しか賄えない。ジョージタウン大学の講演でオバマ大統領は、原発の設計や新規建設については福島原発の教訓に学ぶべきである、としながらも、「単純に原発を論外とすることはできない」と述べている。
野党・共和党は原発を支持する傾向があり、原発の重要性を強調することによって、オバマ大統領が掲げる包括的なクリーン・エネルギー戦略に対する共和党内での反対派を懐柔する、というもう1つの狙いもある。10年以来、オバマ政権は新規の原発建設の連邦融資保証に対する支持など、原発促進に前向きになっている。
議会では、福島原発事故を受けて共和党議員と原発業界との会合が持たれた。ワシントンの連邦議会では、原発業界の最良の友として知られるラマー・アレキサンダー上院議員(テネシー州)が、原発の安全性記録が優れていることを取り上げ、原発のさらなる促進を強調している。上院では、共和党が少数派の環境公共事業委員会でジェームズ・インホフ議員は、NRCは原発に対する規制に熱心すぎて、その存立を脅かしている、と批判している。
一方、民主党議員は環境支持団体がよく問題にする安全性を重視する傾向がある。全米104原発の安全性のチェックをNCRに強く迫ったのも、上院環境公共事業委員会委員長のバーバラ・ボクサー議員(カリフォルニア州)だ。