米国の原発事情【上】 全米104カ所の原発は安全か? 原子力規制委員会(NRC)による安全性チェックのゆくえ


NCR委員長のグレゴリー・ヤツコ氏は、その中間の立場をとっている。彼はオバマ大統領に任命されたが、原発業界とも関係が深い。共和党議員の多くは、NRCは“政治に利用される”のではなく、厳密に科学技術的専門性によって運営される機関であるべきだと主張している。

ヤツコ氏はウィスコンシン大学の物理学博士号を取得しており、科学の素養もあるが、長年、民主党支持者でもある。彼はブッシュ前大統領によってNRCの5人のメンバーの1人として任命され、上院共和党多数派のハリー・ライド院内総務の強烈な影響下でライド氏のために働いたが、それ以前はエド・マーキー民主党下院議員の下で働いていたことがある。同議員は反原発派の最右翼でもある。そういう事情からオバマ政権下でヤツコ氏はNCRの委員長に昇格した。

最近開かれた議会公聴会でヤツコ氏は、インホフ上院議員の圧力の下で、福島原発事故に対応し、米原子力規制法で認められているがほとんど使われたことがない“緊急権限”を発動したことを認めている。その“緊急権限”とは、ヤツコ氏に危機情報を集中させるとともに、オバマ政権内部でヤツコ氏の見解を最重要視させるというものだ。

その一例が、在日米国人に対する福島原発半径50マイル(約80キロメートル)圏外への避難勧告だった。日本政府は20~30キロメートル圏外避難を勧告していた。原発業界の原子力研究所は、ヤツコ氏の避難勧告の“科学的根拠”について疑問視している。共和党議員の中には、ヤツコ氏の緊急権限行使は権限逸脱に当たるとする意見もある。

ただ、ヤツコ氏は既存原発の閉鎖には踏み込んでいないし、新規原発の建設申請についても、その作業はあきれるほどもたもたしているものの、手続き自体は認めている。

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