そのため、蜂に刺されて蜂毒が血液中に入ると、アレルゲンを無毒化するために「IgE(アイジーイー)抗体」と呼ばれる、免疫グロブリン(タンパク質の一種)が作り出される。このIgE抗体は刺された直後ではなく、できるまで4~5週間くらいかかるという。
そして、2回目以降に蜂に刺されて再び蜂毒(アレルゲン)が体内に入ると、IgE抗体がマスト細胞(肥満細胞)にくっつき、細胞内にあるヒスタミンやセロトニンなどの生理活性物質(生体内のさまざまな生理活動を調節したり、影響を与えたりする)が一気に放出される。その結果、冒頭で挙げたような全身症状が引き起こされる。
2回目以降の蜂刺されは、特に気をつけたほうがよいというのは、こうした理由からだ。
「抗体ができる前に刺された場合は、刺された時期によって症状が出る場合もあります。また、最初に蜂に刺されたときと、2回目以降で刺されたときの、間隔が空いていたとしてもアナフィラキシーは起こります。1回刺されると、記憶として細胞に残っているためで、ある程度間が空いていたとしても、リスクがあることには変わりありません」と海老澤医師は話す。
刺されると危険な蜂の種類は
このほか、蜂刺されとアナフィラキシーの関連について、海老澤医師に聞いた。
■刺された蜂によって、危険性は異なるのか?
1度目はスズメバチで、2度目はアシナガバチ(あるいはその逆)に刺されたとしても、アナフィラキシーは起こる。これは、アシナガバチとスズメバチにはアンチゲン5など、共通する成分があるためだ。またミツバチは、スズメバチやアシナガバチと比べると、アナフィラキシーのリスクは低いものの、ゼロとはいえない。
■蜂刺されのアナフィラキシーは、食物や薬物などほかの原因によるものと違いがあるのか?
アナフィラキシーの原因には蜂刺され以外にも、食物や薬物によるものなどがある。最近では、新型コロナウイルスのワクチンで起こるアナフィラキシーで、この名前を知った人も多いのではないだろうか。
蜂刺されによるアナフィラキシーは他の原因と比較して重症化しやすく、発症するまでの時間も短いことがわかっている。海外の研究によると、心停止まで食物は平均30分、毒(昆虫によるもの)は15分、薬物は5分とされている。
一般社団法人日本アレルギー学会の『アナフィラキシーガイドライン2022』では、2020年にアナフィラキシーショックで亡くなった人のうち、詳細不明を除いて、最も多い割合を占めるのが蜂刺されだった。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら