ソフトバンク「孫会長は大興奮」でも慎重な再出発 久々に示された「新規投資先」に透ける手堅さ
久々に公の場に現れた孫会長は登壇するやいなや、“孫節”を炸裂させた。プレゼンテーションにおいて、AIチャットボットの「ChatGPT」など、生成AIに対して興奮気味に言及。5兆円を超える手元資金の存在を強調し、「いよいよ反転攻勢の時期が近づいている」と繰り返したのだ。
「大赤字を出して、恥ずかしくて引っ込んでいるのではないかという説もあるようだが、実は大変忙しく、楽しく、活発にやっている」(孫会長)
アームの上場も目前とされ、明るい兆しが見えてきたソフトバンクグループ。2023年4~6月期決算では、同社が重視する指標の「NAV(ネット・アセット・バリュー、保有株式-純負債)」も、為替の追い風を受け、2期連続で回復した。
投資額は四半期ベースで1年ぶりに10億ドルを超え、投資の再開が実績として示された。
物流企業への投資では定量的根拠を説明
ただ、生成AIに熱狂する孫会長の興奮そのままに、WeWorkへの投資失敗などを招いた強気路線に回帰するのかといえば、そうではなさそうだ。
例えば3~7月の間の新規・追加投資先として示された、物流系の3社だ。2007年設立のSymboticや2013年設立のBerkshire Greyは、ともにAIを活用したロボット技術により、倉庫の自動化に貢献する企業。2017年設立のTELEXISTENCEは、コンビニのバックヤードで飲料を補充するAIロボットを展開し、ファミリーマート300店舗への導入が決まっている。
8月8日の決算説明会では、こうした物流企業へ投資した背景について、まず物流市場の規模が日本で48兆円、世界で200兆円に上ることを提示。これが、インターネットと紐づいた成長市場である広告の8~9倍に相当することも付け加えた。
メディア向けの決算説明会において、新規投資先を重点的に紹介するのは8四半期ぶりだったが、投資判断の蓋然性について、定量的な根拠を押さえる手堅さが目立った。
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