第一三共、インド問題終結でも次なる試練 後発薬市場に挑み7年近く空費

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結局、国内製薬大手で唯一、海外の後発薬市場に挑んでいた第一三共は、その戦線から離脱した。中山社長は今回の説明会で、「ランバクシーの買収当時、世界の後発薬市場はこれほど激しい競争状態になかった。高まる価格引き下げ圧力に対抗するには、規模拡大がメインの戦略となるが、そのための資金はかなり大きなものになる」と述べている。

調査会社のエバリュエートファーマによると、世界の後発薬市場は2008年の530億ドルから2020年に1070億ドルへ倍増する見通し。当初の見通しとは違う激しい競争になったとはいえ、買収から7年近くを空費し、成長の柱になりうる市場で足場を築けなかった代償は大きい。

迫る超大型製品の特許切れ

それだけでなく、世界で約3000億円を売り上げている、超大型製品の降圧剤「オルメサルタン」に関門が待ち構えている。まず、1000億円強を売り上げる米国で、2016年10月に特許切れを迎える。米国では通常、特許切れから1年で8~9割が後発薬に置き換わる。さらに2017年2月に日本と欧州で特許が失効するだけに、このままでは大幅な減収は避けられない。

「オルメサルタンの特許切れはあるが、全体で見るとかなり有望な製品がそろっている」(中山社長)と自信を示すが、次の大型製品に育てようとしてきた、血栓が詰まる病気を防ぐ「エドキサバン」も未知数だ。

2015年2月に米国で発売し、日本でも2014年9月に適応症が追加され、本格的な販売に乗り出した。だが、米国ではすでに独バイエルなど、3社が同様の薬を販売している。エドキサバンには、米国では腎機能が正常な患者には使用できないという、競合品にない制限もあり、先行する3社に追いつくのは容易でない。

今回、サン・ファーマの株式売却で手にした4000億円近くのキャッシュは、研究開発やエドキサバンの大型化に向けた投資など、新薬事業の拡大に充当する方針。特に日本、米国、中国の成長を狙う。現状3位の日本では新製品を伸ばし、「トップシェアを狙う」(中山社長)と強気のコメントも飛び出したが、目標の時期や具体的な戦略は明言しなかった。

第一製薬と三共の経営統合から10年。ハイブリッドビジネスに見切りをつけた第一三共は、新薬事業の強化でどこまで成長できるのか。インド問題が片付いても、次なる試練が待ち構えている。

「週刊東洋経済」2015年5月16日号<11日発売>「核心リポート05」に加筆)

長谷川 愛 東洋経済 記者
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