第一三共、インド問題終結でも次なる試練 後発薬市場に挑み7年近く空費
4月21日、第一三共はインド最大の後発医薬品メーカー、サン・ファーマシューティカル・インダストリーズの保有株をすべて売り払い、7年前に掲げた戦略は“振り出し”に戻った。
「2030年を見据えた成長には複眼が不可欠だ」。2008年6月、当時、インド最大手だった後発医薬品メーカー、ランバクシー・ラボラトリーズの買収を発表した際、庄田隆社長(当時)はこう語っていた。5000億円近くを投じた買収の狙いは、ランバクシーの世界拠点を使い、新興国・後発医薬品という新しい成長領域に進出し、自社の新薬開発も合わせた「ハイブリッドビジネス」を構築することだった。
ハイブリッドの追求は終わった
だが、買収直後から、インドの主力工場でずさんな品質管理が発覚。株価が暴落し、2009年3月期は、約3500億円もの減損処理を強いられた。13年、14年も二つの工場が米国への禁輸措置を受けるなど、トラブルが続いた。
そうした中、かねて打診を受けていたサン・ファーマによる吸収合併で、2014年4月に合意。ランバクシーの保有株をすべて手放し、サン・ファーマの株式9%を取得することになった。第一三共の中山讓治社長は、買収後に生じた巨額の損失について、「サン・ファーマとの提携による事業収益で取り戻せると思っている」と語っていた。
ところが今回、サン・ファーマ株式をすべて売却。海外の後発医薬品メーカーとは縁を切ってしまった。5月15日に開いた経営説明会で、中山社長は「グローバルな事業軸で後発薬をやることはもうない。ハイブリッドビジネスの追求は終わった」と言い切った。
早期売却の背景にあるのが株高だろう。モディ政権への期待を受けた相場上昇や、サン・ファーマの好業績もあり、吸収合併で合意した14年4月から同社の株価は倍近くまで上昇。2015年3月期に第一三共は約3600億円もの合併差益を計上した。事業収益で稼ぐ前に、株価の大幅な上昇で、ランバクシーの巨額減損はほぼ帳消しになったわけだ。
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