第一三共が問題のインド子会社を実質売却 買収から5年の空費、巨額損失計上でも引責なし

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4月7日の会見でインド子会社に対するサン・ファーマの吸収合併について説明した中山讓治社長

2008年の買収以来、第一三共を悩ませていたインドの後発医薬品メーカー、ランバクシー(インド5位、世界9位)。4月7日、第一三共はインドの同業で国内2位、世界5位のサン・ファーマ(以下、サン)による吸収合併で合意したことを発表した。

 合併は株式交換(ランバクシー1株にサン0.8株を交付)によるもので、14年末の結了を目指している。現在、第一三共はランバクシー株の63%を持つ筆頭株主だが、合併が成立すればサン株を9%保有することになる。5000億円近くを投じて08年にランバクシーを買収した目的は、世界的に拡大する後発品需要の取り込みに加え、自社の新薬をランバクシーの持つ新興国向けの販路に乗せるなどハイブリッドなビジネスの実現だった。

だが、08年10月の買収直後、米食品医薬品局(FDA)の査察でずさんな生産管理態勢が発覚し、インド国内の2工場が対米禁輸措置を受けた。第一三共は役員派遣などのサポートを行ったものの、同じ理由で13年には買収後に稼働したモハリ工場が、14年には各工場に原薬を供給するトアンサ工場が対米禁輸となり、グリップの甘さを露呈してしまった(関連記事「インド拠点が禁輸、第一三共M&Aの蹉跌」)。もはやハイブリッドどころではなく、「子会社をどう立て直すか」というよりも、「立て直せるのか」が市場の関心だった。

合併提案は渡りに船

ランバクシーがグループのお荷物となりつつある中、「以前からランバクシーと一緒にやれないかと言ってきていた」(中山讓治社長)サンの合併提案は渡りに船。しかも、条件は悪くない。株式交換比率と現在の時価から計算すると、保有するランバクシー株は2100億円超のサン株になる(4月7日時点のサン株価586ルピー、1ルピー=1.72円で計算)。第一三共が保有するランバクシー株の簿価は約900億円なので倍以上の評価だ。

今後、第一三共としては、サンとの業務提携を目指し、ランバクシーが相手だった時と同様、相手先の販路を活用するなどハイブリッドなビジネスを模索する。やることが同じなら、支配権を持てなくてもサンの株主の方がいい――。7日に行われた中山社長の会見のやり取りからも、そんなニュアンスがにじみ出ていた。市場もこの発表を歓迎し、日経平均が2%弱下げる中、第一三共の株価は逆に3.3%も上昇した。

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