大日本住友製薬が大型買収、肥沃な米国市場に一手
製薬業界準大手の大日本住友製薬が、世界市場攻略に一手を投じた。
9月3日、米ナスダック上場で中枢神経、呼吸器領域に特化した製薬会社セプラコール社の買収を発表。TOB(株式公開買い付け)により、最大2500億円で買収する。500億円は自己資金、2000億円はブリッジローンで調達するという。
同社は現在、統合失調症治療薬「ルラシドン」をグローバルに治験中。多田正世社長が「大化けを期待している」という新薬で、特に2011年を予定する最大市場・米国での販売網構築をどうするか検討中だった。「売り上げ2500億円の会社が、2500億円で買収するから驚くだろうが、米国で分厚い体制を作るのは自社では無理」(多田社長)と判断した。
買収により売上高は3840億円(09年3月期は2640億円)へ拡大、業界7位から6位に浮上する。海外売上高はゼロから4割へ急増し、「ルラシドン」に加えて、セプラコール社の分厚いパイプライン(新薬候補群)も確保した。日本の統合失調症薬の市場規模1200億円に対し、米国は統合失調症と双極性障害(躁うつ病)合わせると8000億円といわれる。「市場規模も成長スピードもまったく異なる」(多田社長)との判断が買収へと走らせた。
08年以降、国内製薬会社による海外企業の買収が相次いでいる。国内最大手の武田薬品工業は、昨年5月に米ミレニアム・ファーマシューティカルズを9300億円で買収。同10月には塩野義製薬が米サイエルファーマ社を、11月には第一三共がインドのランバクシー・ラボラトリーズ社を買収するなど大型M&Aが目白押しだ。
背景には、医療費抑制策で医薬品市場がシュリンクしている日本から抜け出し、海外シフトを進めようとする思惑がある。また、「2010年問題」も重くのしかかる。10年前後、国内各社が持つ新薬の特許が相次いで切れる。大日本住友製薬でも主力4製品のうち、08年に最有力の高血圧症治療薬「アムロジン」が特許切れ。その後、後発医薬品が相次いだことで、収益が伸び悩んでいる。
今回の買収も、新たな事業収益の構築に向けたものにほかならない。国内製薬業界が海外企業のM&Aに走る今の流れは続きそうだ。
(福田恵介、前野裕香 撮影:鈴木紳平 =週刊東洋経済)
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