社員だから気づく、企業が危機に陥る思わぬ予感 経営者は過去の成功体験からサインを見逃す

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結果として、アパレルの購入にあてられるはずだった資源の行き先は変わってしまった。それはつまり、完全に異なる消費チェーンが、買い手にとって以前よりも重要になったということだ。その後、彼らの獲得したい特性も変わったため、結局のところ、従来の商品を提供するために整えられていた機能までも現状にふさわしくないものになっている。

こうして後から状況を振り返るのは何の造作もないことだ。大事な問題は、この転換点の到来をどうすれば予測できたのかということだろう。

「こだわり」が裏目に出るとき

この年齢層の顧客に関して小売業者が伝統的にこだわり続けた主要な評価基準の1つに、極めて重要だった「新学期」シーズンがある──ある観察者はこう語った。

「既存の店舗が拠って立つビジネスモデルに、今後も小売業は大きく依拠することになるだろうが、そうした従来のビジネスモデルは(「新学期」のような)特定の時季に増益が見込めることを前提にしたものだ」

また、小売業者の多くは「毎平方フィート当たりの売り上げ」や「時間ごとの同店舗売り上げ比較」といった従来の評価基準にもとづく想定を組み立てていた。そして、このような基準に固執していた小売業者が、インターネットから出現しつつあった脅威に気づくはずもなかった。

もし彼らが注意を払っていたら、何かしらのヒントを得ていたかもしれない。2007年当時、研究者たちはすでにインターネットについて、そしてもっと端的に言えば、ソーシャルメディアについて意見を発信し始めていた──それらが10代の若者の時間の過ごし方を劇的に変えている、と。

その年齢層がこれまで友情を長続きさせるためにとっていた行動(家の電話で話をしたり、どこかで一緒にぶらぶらしたりするなど)がソーシャルウェブサイトやインターネット中心に変わり始めていることを研究者たちは突き止めていたのだ。

当時の『ワシントン・ポスト』紙の記事によると、10代の青年たちが従来型の実店舗でまだショッピングしていたときでさえ、携帯電話が──友だちと連絡をとったり、買った商品への承認を得るために──頻繁に使われていたという。その記事に登場する10代の少女は、洋服のおかげで自分の存在を周囲の人たちに認めてもらえると語っている。

「私がどういう人間なのかを、ほんの少しでいいからまわりの人たちにわかってもらいたいの。そして、そのことに誇りも感じている」

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