アメリカのティーンエイジャーに服を売っている企業がターゲットにしているのは、彼らの自由裁量による家計出費だ。一般的に状況を左右するのは、家計予算(ティーンエイジャーとその両親を合わせたもの)に責任をもつ人たち、つまり(一定期間にわたって)何にお金を使うかを決める人たちである。
ここでの完了すべきジョブ(商品やサービスが顧客に対して果たす役割)は、ショッピングモールに足を運んだり、ウェブサイトにアクセスしたりする気にさせるものなら何でもいい。
「仕事や遊びに着て行く洋服が必要」でもいいし、「洋服ダンスの中身を一新することが必要」でも、「特別なシーンでの装いが必要」でも構わない。これらの必要性に対処すべく組み立てられる消費チェーンは、オンラインとオフライン両方の商店──消費者に、さまざまなセッティングに合わせて洋服を供給するアパレル業者──で構成される。ステークホルダーたちにとってもっとも気がかりな特性は、顧客の全体験というよりむしろ、デザインやトレンドなど、製品そのものと関係がある。
また、この市場に参入するのに不可欠な機能は、あらゆる種類の小売業者によって数十年間にわたってすでに整えられているものばかりだ──多くの場合、(デザイン改良や店舗への商品出荷に要する期間といった)従来の制約に沿う形で。
変化は思わぬところからやってくる
これまでのところは順調。ところが、ここで巻き起こったのが2007年の携帯電話革命である。iPhoneの導入とアンドロイドの商業化とともに起きたこの革命により、家計予算の責任者が完了すべきジョブの序列が劇的に変わることとなる。このときすでに、ソーシャルメディアは確立され、誰かとつながっていたい欲求は若者の間で動かしがたいものになっていた。その欲求をさらにかき立てるテクノロジーが登場したのだ。
こうして、他者とつながり続けるというジョブが、洋服を買うというジョブに(ある程度まで)取って代わった。もちろん衣類がもう購入されなくなったわけではないが、完了すべき種々のジョブを1つの階層組織のなかで考えれば、つながりを保つというジョブの重要度は以前よりはるかに高まったと言えるだろう。
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