やっぱり芦田愛菜は"無敵"であるといえる理由 子役時代から成人した現在までの軌跡から読み解く

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そしてこの言葉に触発され、寄り添うだけでなく自ら行動する覚悟を固めた九条によって過酷ないじめの実態が暴かれたとき、鵜久森は初めて自らの心の内をクラスメイト全員の前でさらけ出す。およそ5分半に及ぶ長ゼリフをしゃべりながら、切々と思いを吐露し、時に涙する芦田の演技には、SNSなどで感嘆する声が数多く寄せられていた。

この場面には、芦田愛菜というひとりの俳優、そしてひとりの人間の魅力、広く支持される理由が凝縮されているように思える。それはどういうことか? 彼女のこれまでの道のりをたどり直しながら解き明かしてみたい。

『Mother』の衝撃

2004年生まれの芦田愛菜は3歳の頃から子役として活動を開始。その演技に大きく注目が集まったのは、ドラマ『Mother』(日本テレビ系、2010年放送)だった。

芦田愛菜が演じる道木怜南は、小学1年生。母親から日常的に虐待を受けている。代理教員としてクラスを受け持っていた鈴原奈緒(松雪泰子)はそのことに薄々気づきながらも素知らぬふりをしていたが、あることをきっかけに怜南を「誘拐」し、自分で育てることを決意する。

この道木怜南役はオーディションで決まった。当初はもう少し上の年齢の児童を想定していたため芦田愛菜は条件から外れていたが、オーディションでの演技に圧倒されたスタッフが合格を決めた。脚本も、芦田のまだ小さかった体格などに合わせて書き換えられることになった。

その脚本を担当した坂元裕二は、逃避行を続ける怜南と奈緒を追って、実の母親(尾野真千子)が2人の元を訪ねてくる場面での芦田愛菜の演技に衝撃を受けた。

それは第8話でのシーン。道木怜南が、訪ねてきた実の母親を「もうお母さんじゃない」と追い返したあとに鈴原奈緒の胸で泣く。「それが胸をかきむしられるような泣き声だった」と語る坂元裕二は、「どうしてあんなふうに泣いたんでしょうね。技術とかじゃないし、5歳の芦田愛菜ちゃんがどんなふうに感情を作ったのかもわからないし、本当に不思議です。あれはすごかった」と振り返る(『CREA』2018年11月2日付け記事)。

さらに、子役・芦田愛菜の人気を決定づけたのが翌年放送の『マルモのおきて』(フジテレビ系、2011年放送)である。

ここで芦田愛菜が演じたのは、父親を失うなかで双子のきょうだい・笹倉友樹(鈴木福)とともに父の親友・高木護(阿部サダヲ)に引き取られ、育てられることになる笹倉薫。

姉として気丈に振る舞うなかにもふと寂しさをのぞかせる役柄である。愛犬のムックとともに暮らす3人の日々、関係性の深まりがほのぼのとしたなかにも感動的に描かれたドラマで、高い視聴率をあげた。

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