赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ
こうして子会社を分離させようという一派が動き始めます。親会社にとって、それが最善だと働きかけるようになります。タフな交渉を続けてもなかなか資金を出してくれない金融機関に比べれば、有力な子会社を上場させればずっとイージーに事業継続のための資金が手に入るでしょう。「そのほうがいいですよね」と経営陣にも囁き続けるわけです。
さて、ここまでが一般論なのですが、楽天グループの場合はどうなのでしょうか?
楽天銀行と楽天証券は実は楽天から分離させても、グループの企業価値をそれほど損ねることはありません。資本的に一体化していたほうが戦略は一貫しますが、出資比率が下がってもグループ会社としての緩い一体感がありさえすれば楽天グループの価値に大きな変わりはないでしょう。
たとえて言えば、仮にセブン&アイからセブン銀行が完全に資本離れするようなことが起きたとしても、セブン-イレブンの戦略に大きな影響はないというのと同じです。
「虎の子」の分離はありえない
一方で楽天カードは違います。楽天市場で買い物をした人が楽天カードで決済する。これがビジネスモデルの両輪で、楽天はひとりの顧客から二度稼ぐことができます。
そしてここに今回、楽天ポイントと楽天ペイが再編の形で加わりました。そうなると4000万ユーザーを擁する楽天ポイント経済圏の未来も楽天カードに委ねられることになりますし、今後の市場拡大が期待されるキャッシュレスも楽天カードの一部門となります。
当然のことながら楽天カード株式会社は、今回の再編で楽天グループの最重要子会社になりました。この子会社は楽天グループの虎の子であると同時に、楽天経済圏の扇の要であり、楽天グループにとってはビジネスモデル的に不可分な事業体になります。ですから楽天カードを本体から分離させていくことは戦略的にはありえません。
しかし仮に私が悪魔のような考え方をする人物だったら、どうでしょうか。架空のシナリオを考えてみましょう。
ここでは私のことをハゲタカと呼ぶことにします。ハゲタカはたまたま有利なポジションにいたことで、楽天グループとそのステークホルダーたちに影響力を与えることができる人物だったと仮定しましょう。
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