赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ

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私がハゲタカなら楽天カード株式会社を上場させ、楽天グループの有利子負債を返済させる資金源にしようと企てるでしょう。そのためには楽天グループの業績が傾いたほうが都合がいいと考えます。

そこで部下に命じて、たとえば楽天カードのポイント還元率を改悪するような施策を打ちます。グループ内ではカード事業の利益が向上することを評価させる一方で、外部からは「楽天グループ、こんなことをするなんて危ないんじゃないか」という声が上がります。

こうした工作を続けるうちに楽天グループの経営は苦しくなり、銀行団は有利子負債の借り換えに難色を示すようになります。グループが行き詰まればチャンスが生まれます。楽天カードの株式を何らかの形で売却しようというところまで経営陣が追い込まれるからです。

そこでハゲタカは楽天グループを救う形で、楽天カードに資本注入を決定します。持ち株比率を段階的に上げて、いずれは筆頭株主を目指します。

ここで楽天ポイントを握っていることが、ハゲタカに有利に働きます。ポイント還元率を絞れば絞るほど楽天市場は弱体化していくでしょうし、足手まといの楽天モバイルのポイントはゼロにしてしまえば、モバイルはより経営の足を引っ張るようになるでしょう。

悪魔シナリオから楽天を守れ

最終的に楽天グループが何らかの形で経営破たんすることをハゲタカは待ちます。最終目的があるのです。それは経営破たんしたグループから楽天市場を分社化させて、それを救済し民事再生する形で、ハゲタカが持つ楽天カードの傘下につけることです。モバイルの残骸と借金は創業者に押し付ければ完璧です。

これはあくまで私個人が考える「もし私がハゲタカだったら」という悪魔シナリオです。日本経済では過去にはこんなことも履いて捨てるほど起きてきたのですが、当然ながらこんなことが横行する資本主義経済は発展しません。楽天に悪夢が起きるようであれば、日本経済の発展機会はさらに10年は失われてしまうでしょう。

この楽天の資本問題は関係者以外にとっての対岸の火事ではなく、日本経済の重要な分岐点だと思うべき大事です。そしてメディアもこの先、変なことが起きないように注視すべき事柄なのです。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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