赤字縮小の楽天G、三木谷氏に迫る「悪魔シナリオ」 「ポイント経済圏」握る楽天カード上場は危険だ
決算発表では具体的に、楽天モバイルの損益分岐点シナリオも提示されました。まだこの先の道のりは険しいままではありますが、楽天グループは一歩前進できたと言えるでしょう。
さて、このような決算発表ではありましたが、楽天グループの未来はこの先、危機の連続です。三木谷浩史会長兼社長CEOが最終的に生き延びられるかどうかを賭けた戦いが待っています。それはグループの資金繰りを巡る、苦難と陰謀に満ちたドラマになるでしょう。
かなりおどろおどろしい表現をしてしまい恐縮なのですが、実際、楽天グループについてはメディアで報道される赤字幅の問題以上に投資家が気にしていることがあります。それがモバイル事業を行うために抱え込んだ、巨額の有利子負債とその返済スケジュールです。楽天グループの有利子負債は、足元で約1.8兆円まで膨張しています。
【2023年8月17日15時追記】有利子負債額を金融事業を除いた数字に修正しました。
これは日本の資本主義の悪い側面といっていいと思いますが、大企業グループの経営がいったん傾き始めると、投資家と金融機関が群がるようにグループの解体を始めます。最近の例でいえば東芝解体がその典型です。
楽天と東芝の危うい共通点
東芝の場合、経営陣による不正会計とアメリカの原子力関連の買収会社の巨額損失で経営が傾いた結果、グループ解体が始まります。
東芝メディカルシステムズはキヤノンに、テレビのレグザは中国ハイセンスに、パソコンのダイナブックはシャープにといった具合に売却されました。稼ぎ頭でもあるフラッシュメモリは、キオクシアとして分社化され外部の資本が注入されます。
その後、資金調達の必要性から本体にいわゆる物言う株主であるファンドを受け入れたことで、東芝はファンドの思惑に沿ってさらに分社化される寸前まで事態が悪化します。そこで登場した政府系ファンドの力を借りて経営を巡る状況が一転し、このたびTOBが成立する見込みになりました。
これ以上の東芝解体の動きは止まると思われますが、歴史のある大企業ですら、いともたやすく解体されていくというのが日本式の資本主義です。
銀行管理下で企業の解体が行われる場合、おいしい事業から順に手放すのが定石です。わかりやすい例を出しますと、ダイエーや西武グループが傾いた際にはスーパー事業ではなくコンビニ事業を売却しています。そして楽天グループでも、同じことが起き始めているのが懸念点です。
具体的にはまず楽天銀行が上場し、次いで楽天証券が上場準備を開始しています。上場というと一見ポジティブなイベントに見えますが、グループの中枢会社が上場するということは、実際には資金繰りの一環で外部資本を受け取ることと引き換えに子会社を切り売りする財務戦略です。
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