楽天、「3300億円増資」でも続くモバイルの綱渡り 今期黒字化は早々に断念、当面はKDDIの助けも

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赤字が続く楽天モバイル。6月からKDDIとの新契約の下で「最強プラン」を導入する(撮影:尾形文繁)

不退転の決意は、はたして実を結ぶのか。

モバイル事業に巨額の投資を続ける楽天グループ。同社は5月16日、公募増資と第三者割当増資により最大3300億円の資金を調達し、モバイル事業への投資や社債の償還に振り向けると発表した。

新たに発行する株式は最大5億4690万株で、同社の発行済み株式総数の34%に相当する。うち9割弱は国内外の一般投資家向けに発行し、残りの1割強を三木谷浩史会長兼社長の親族の資産管理会社2社のほか、サイバーエージェントと東急に割り当てる。

増資によって調達する資金のうち、6割弱をモバイル事業の設備投資に、残りを社債償還などに充てる方針だという。

公募増資を検討している旨の報道が流れた5月15日以降、株式の大幅な希薄化に対する懸念から、投資家の間では楽天グループ株の売りが殺到。報道前と比べ、足元の株価は2割近く下落している。

こうした事態は当然、楽天側も織り込み済みだっただろう。だが、リスクを負ってでも、楽天は資金調達する必要に迫られていた。

決算短信には従来目標を撤回する一文

2020年にサービスを本格的に始動した楽天モバイルの大赤字が続く中、楽天グループの自己資本比率は3.8%(2023年3月末時点)と危険水域に到達。さらには今後3年で約9000億円の社債償還が控えている。

償還時期の近い楽天グループの社債一覧

手元資金を確保すべく、4月に楽天銀行を上場させて717億円を調達したほか、楽天証券ホールディングスの上場も計画している。5月12日には、20%を出資する西友ホールディングスの株式をすべて売却することを発表した。

ここに来て、あの手この手で資金調達に奔走する楽天。その最大の誤算は、モバイル事業の契約数の伸び悩みにある。

「計画の見直しを行った結果、モバイル事業単体での2023年中の単月営業黒字化は困難だと考えている」

5月12日に開示された2023年度第1四半期の決算短信。「連結業績予想に関する定性的情報」の項目には、こんな一文がひっそりと載せられている。

これまで三木谷氏は2023年中の単月黒字化を掲げ、2月時点でも「年内に頑張って目指したい」と公言していた。ところが年度が始まって早々、その目標を断念した格好だ。

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