崖っぷち芸人TAIGAの人生が変わる「と思った」話 一世一代の大舞台「R-1決勝」の思わぬ結末

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当時所属していた事務所が、ある芸人コンビに突然、力を入れ始めたのだ。悔しいから名前は書かないが、M-1グランプリは毎年一回戦敗退。ネタ番組にもほとんど受からず、周りの芸人から評価されていなかった。だが、会社側が「あいつらを売るぞ!」と一致団結したらしい。

事務所に目をかけられるようになったそのコンビは、お偉いさんたちが他の芸人に目移りして仕事が流れないように、さらに媚びへつらった。「ステージで評価されてなんぼ」という、芸人としてのプライドのかけらも感じられないその振る舞いを目の当たりにし、俺をはじめとする所属芸人はみんな荒れた。

一方、そのコンビは、あっという間にイベントの司会や深夜番組のMCに抜擢されていった。俺は愕然とした。

「事務所の中で一番結果を出してる俺が適任だろ!」

その怒りも次第に虚しく思えてきた。事務所を挙げて猛プッシュされる彼らとは対照的に、俺たちの扱いはそれ以降も変わることはなかった。

人生を変えるネタづくり

とはいえ、そこで腐ってばかりいても始まらない。俺は2013年の4月から、毎月新ネタ3本作るライブを主催することにした。面白いネタが思い浮かばない月もあった。自分の実力のキャパをオーバーしてるんじゃないかと落ち込んだ。だが、毎月のライブが終わると、心が晴れやかだった。終わったあとはゲストやぺこぱと一緒に朝まで痛飲した。

何ヶ月か経った頃、ベタなショートコントを、ツイストを踊りながらやったら面白いんじゃないかと思いついた。すぐに近所に住んでいた松井(現在はぺこぱ・松陰寺)を呼び出す。

「お前ギターできるだろ?この音出せるか?」

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