映画「バービー」延焼を加速させた米国本社の悪手 原爆コラめぐり炎上、不誠実対応で不鑑賞運動も
たとえば、本社の謝罪が「メディアへのコメント」として出された点は、逆効果の印象を受ける。「SNS炎上の後始末は、SNS上でやるべきでは」との指摘は多々見られる。
そして、対応が遅いことも問題だ。今回、日本法人が比較的素早く動いたこと自体は、炎上後の対応としては一定の評価をすべきポイントだろうが、対照的に米国本部の動きの遅さが際立つことにも繋がった。
もし炎上後に事後対応が適切なものであったら……不鑑賞運動が広がったりすることもなかったのかもしれない。
日本での「原爆」の受け止められ方を外国人は知らない
筆者は常日頃、「あらゆる表現は守られるべき」とのスタンスに立っている。しかし、公式SNSアカウントは「企業の顔」だ。組織として発信する以上、生死や倫理観が関係する発信については、きわめて慎重に扱う必要がある。とくに国家間で価値観が異なりそうな内容は、自国と現地のギャップを知識や肌で感じるべきで、「その場のノリ」に身を任せてはならないと考えている。
日本において「原爆」が、どう位置づけられているか。過去に問題視された事例を確認すれば、イデオロギーを抜きにしても、おおよその空気感はつかめるはずだ。2018年には、韓国のアイドルグループ「BTS(防弾少年団)」のメンバーが、キノコ雲を描いたTシャツを着用していたとして、日本国内でのテレビ出演が見送られる騒動もあった。
バラク・オバマ氏が、現職のアメリカ大統領として、初めて広島平和記念資料館(通称:原爆資料館)を訪問したのは2016年。今年(2023年)5月には、ジョー・バイデン大統領も原爆資料館を訪れている。国際政治と切っても切れない話題だということも、調べれば、すぐ出てくるはずだ。だからこそ、どこか軽率な印象を覚えた国内ユーザーは多かったのだろう。
グローバル展開する企業は、商圏とする各国の事情に敏感になる必要がある。また現地法人も「本国がやったこと。自分たちには関係ない」では済まされず、いざという時には誠実な対応が求められる。それだけに、本社と現地法人のギャップが明確になったと感じさせられる一件だった。
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