映画「バービー」延焼を加速させた米国本社の悪手 原爆コラめぐり炎上、不誠実対応で不鑑賞運動も

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(ポイント2)本国に厳然とした態度を取ったこと

日本法人の謝罪文では、アメリカ公式の発言を「配慮に欠けた反応」と断じ、「然るべき対応」を求めている。ともすれば、「本社のやらかし」を現地法人が謝罪することにより、メンツをつぶしかねない。本社の対応によっては、「やっぱりダメじゃん」と失望させかねない、諸刃の剣でもある。しかしながら、本国の事情にとらわれず、日本のSNSユーザーの心情に寄り添うように「強気の姿勢」を示したことで、留飲を下げた人も多かっただろう。

(ポイント3)企業側の責任を明確化したこと

炎上対応の悪手として、なにを指しているのかよくわからない「抽象的な謝罪」がある。具体的な経緯に触れず、「昨今の報道でお騒がせしており〜」のような、ふわっとした表現にしてしまうと、「しっかり問題と向き合おうとしていないのでは」といった印象を与えがちだ。昨今話題の中古車販売大手「ビッグモーター」の件もそうだが、「なんとなく謝罪したように見せる」ことは、かえって延焼のリスクが高まる。

日本法人の謝罪文では、『バービー』と『オッペンハイマー』が異なる配給会社であると伝えつつ、「#Barbenheimer」はファン発信だと説明する一方、それに乗っかったアメリカ公式アカウントにも責任があることを明確化している。「どこからが自分たちの責任」と、しっかり線引きをすることで、受け手の理解は進みやすくなる。

米国本部の対応は「遅い」&「悪手」だった

もちろん、日本法人の対応も、100点満点とは言えない。謝罪文が文字ではなく、画像で投稿されたことには「翻訳されないようにしているのか」といった指摘がある。「然るべき対応」の具体的な中身も示されていないのも、消費者を不安にさせる可能性がある。ただそれでも、ここまでをスピード感を保ちながら、日本法人の独断で行ったのだとしたら、炎上対応としては高得点と言えるだろう。

そして、それだけに、ワーナー本社の対応は、日本のSNSユーザーの感情を逆なでし、日本法人の炎上対応を水泡に帰すレベル感のものだったと感じざるを得ない。

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