「過度な楽観」が続く米国株には警戒が必要だ 日銀の「姿勢の変化」も今後市場に効いてくる?

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やや話がそれたが、足元のマクロ経済指標の堅調さをもって、「もう景気後退はない」と断じるのは短慮にすぎると考える。アメリカ経済の底流(さらに将来の潮流)は下向きだ。

アメリカの決算は言われているほど好調ではない

このところ佳境を迎えている、同国企業の4~6月期の決算発表についても「実績は市場の事前予想よりもおおむねよい」という分析もあるが、これは楽観に走りすぎていると懸念する。

2023年4~6月期の企業収益予想について、決算発表本格化前(7月13日)のS&P500種指数採用銘柄のアナリスト予想の集計値は前年同期比6.6%減益だった(同国の調査会社であるファクトセット社調べ)

市場が「収益実績が事前予想を上回るものが多い」と喜び騒いでいるので、どれほど収益予想値(実績既発表企業は実績値)全体が上方修正されたのだろうかと思って見ると、7月21日時点では同8.1%減益に下方修正されていた。確かに、その後の予想数値はやや上方修正されたものの、28日時点では同6.2%減益と、前出の13日時点での6.6%減益との差はわずかだ。明らかに市場の「好調な決算期待」は楽観に行きすぎだ。

つまり、アナリストたちが企業取材などを含めてしっかりと作っている企業収益見通しや決算実績と、市場の楽観度合いの差が開いてきているわけで、結果として、S&P500指数の予想PER(株価収益率)は上振れし続けている。

同指数のPERは前回のコラム「日銀会合前後で株価が乱高下したらどうすべきか」でも解説したが、2014年以降で見ると、主として15~18倍のレンジで推移しており、それを上下にはみ出す場合は行きすぎを示す。最近では5月半ばから18倍を超えてPERが急伸し、28日には19.6倍と株価の高さについて警戒信号が灯っている。

金融面でも、27~28日のFOMC(連邦公開市場委員会)で0.25%幅の利上げが決定されたが、ジェローム・パウエルFRB(連邦準備制度理事会)議長が「先行き、追加利上げをするかどうかはデータ次第だ」と述べたにもかかわらず、市場は「もうこれで利上げは終了だろう」などと決め打ちしているように見える。

それ以上に、経済における資金量を示すM2の縮小が気にかかるが、そうしたカネ余りならぬ「カネ足らず」の状況については前回のコラムで詳述したので、そちらを参照されたい。

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