「過度な楽観」が続く米国株には警戒が必要だ 日銀の「姿勢の変化」も今後市場に効いてくる?

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さて、お待たせしたが、日銀の金融政策について触れよう。28日までは日本の株式・債券市場や円相場のみならず、諸外国市場も含めて短期的な波乱が生じたが、それは「日銀のせい」というよりも、市場が「今回は何らの政策変更もない」「いやYCCを弾力化し、実質的に上限を引き上げる意向だ」といった、逆向きの観測報道に振り回されたためだといえよう。

一部では、YCCの変更が世界的な流動性に大いに変調をもたらす地殻変動だ、という論説も目にする。だがそれは、日銀あるいは日本の資金への過大評価だろう。

日銀のわずかな姿勢の変化が市場に効いてくる可能性

ただ筆者は、決定会合後の植田和男総裁の記者会見の発言内容で、2つの注目すべき点があったと考える。

1つは、物価見通しについて「今回2023年度の物価見通しをかなり大幅に修正した。過小評価していた可能性」があるとしたうえで、その対応について「(物価の)上振れリスクが顕在化してから対応すると後手に回って、混乱したり副作用が大きくなる」と語った点だ。

この対応策については、金融政策全般を指したものではなく、YCCだけについて述べたものだ。とはいえ、この発言は物価上振れリスクが下振れリスクよりも高く、それに対してYCCのみならず、おそらく金融政策全般を含めて、後手に回ることの危うさを指していると解釈できる。ということは、少しだけではあろうが、ハト派からタカ派へ向けて踏み出しつつあるのかもしれない。

もう1つは、「YCCの副作用としては、債券市場の機能低下とほかの金融市場のボラティリティー(変動性)ということだが、為替市場は意識したのか」との質問に対し、為替相場は日銀の金融政策のターゲットではないとの前置きを述べたものの、「為替市場のボラティリティーも含めて考えた」と率直に語ったことだ。

ボラティリティーという言葉自体は、市況が上にも下にも大きく変動する度合いを指すが、この場合は、円安に振れすぎるリスクを抑えるという主旨だと解釈できる。

こうした質疑応答からは、日銀はこれまでの想定より早く金融緩和を縮小し、円安も牽制するという方向性だとうかがえる。日銀のこうした姿勢は、どちらかといえば株安・円高方向に作用するものだ。

だからといって、日銀の金融政策のせいで、ただちに一気に株価が下落し、円が急上昇するとは想定しない。だが、今後ジワジワと市場に効いてくる展開は想定すべきだろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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