「西部警察カラオケ」は"脱常識"から生まれた 熱烈ファンの社員が打ち破った業界の常識
最初のミーティングで小倉さんは、えんえんと西部警察への熱い思いを語った。そして最後になってカラオケ企画を切り出した。「そうしたら、その場で『わかった、やろう』と言ってもらえた。社内調整もまだだったので、正直なところ慌てました」(小倉さん)。
その際に小倉さんの話を聞いたのが、石原プロモーションの広報を担当する仲川幸夫常務取締役。「何より、西部警察が好きだという気持ちが本当によく伝わってきて、うれしかった。それに、放映当時女性はあまりドラマを見てくれなかったが、カラオケをきっかけに関心を持ってくれれば、という思いもありました」(仲川さん)。
前述のように石原プロにとってもタイミングがよかった、ということはもちろんある。しかし、それだけではないのだ。「やはり担当者に熱意があったことが決め手。『こんなに愛情をもってくれる人なら、大事に扱ってくれる』と安心できました」(齋藤さん)。
236話をチェックしてカラオケに編集
そのファン魂を証明するかのように、小倉さんは張り切って企画化を進めていった。特に難しかったのがシーン選択だ。「自分の趣味の一環のようなものでもあり、236話をチェックして編集する作業自体は苦にならなかった」(小倉さん)。しかし、取り上げられるシーンの数には限りがあるため、取捨選択に苦悩したのだ。「コアなファンも多いので、ごまかしは効かない。たとえば、その楽曲が使用された放送回からしか映像を選択しない、という具合に気を付けました。また、歴史的な作品を初めてカラオケにするということで、責任も感じました」(小倉さん)。
なお、西部警察を歌いたい場合には、お目当てのカラオケ店に行く前に「LIVE DAM STADIUMは入っていますか」と問い合わせたほうが確実だ。発売から日が浅く、まだ隅々まで設置されているわけではないためだ。
「今回、カラオケとドラマという異なるものが融合して化学反応を起こし、新しいジャンルのエンターテインメントになりました。将来、カラオケで歌うだけでなく、映像や音楽を楽しむ時代が来るかもしれません。『非常識』と言われているところに世界を変えるチャンスがあります。今回の仕事で、そのことを証明できた気がします」(小倉さん)。
情報が豊富な現代は、かえって夢を持つことが難しい時代かもしれない。しかし世間の常識でダメと言われていることには、根拠がないものや、ダメな理由が陳腐化している場合も多い。いわば、「バカの壁」がそこらじゅうに立ちはだかっている。夢を持ち続けて実現させた小倉さんの姿勢から、「ダメもとで挑戦して、そうした壁を打ち破れ」という熱いメッセージが伝わってきた。
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