賛否両論の話題作「VIVANT」と「半沢直樹」決定的差 同じ堺雅人主演、福澤監督の両作に明確な違い

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ただ、これらの不満や盛り上がりの不足には、はっきりとした理由があり、それは決して後ろ向きなものではありません。むしろ前向きなもので、少しの誤解やミスによるところが大きいのです。

物語より「映像重視」の徹底した逃亡劇

まず「けっきょく逃げただけで終わった」「ストーリーがスカスカ」「誤送金とか架空の国の話でわかりづらい」などの物語に対する不満について。制作陣からしたら、これらの声は想定内であり、「おっしゃるとおりかもしれません」という感覚ではないでしょうか。

(写真:「VIVANT」サイトより)

そもそも「VIVANT」は、演出家の福澤監督が原作から手がけているように、「物語より映像重視」という感の強い作品。大量の車を豪快にぶっ壊し、テロリストの爆破を食らい、遊牧民にまぎれて逃げ、大使館の地下通路から脱出を図り、ラクダと果てしない砂漠を歩くなどの日本ドラマ史に残るであろうダイナミックな映像を楽しんでもらうことが前提の作品です。

一部で「字幕が多くて見づらい」という声も挙がっていますが、画面の小さいスマホでの視聴や、ながら見する人に合わせた作品ではないのでしょう。「他では見られないスケールの映像を大きな画面で楽しんでほしい」「字幕が苦手な人も映像で魅了しよう」というトライが感じられます。さらに言えば、小さな画面で見る人より、世界各国の人々に見てもらうことにプライオリティーを置いているのかもしれません。

(写真:「VIVANT」サイトより)

番組ホームページの“はじめに”には、「敵か味方か、味方か敵か―冒険が始まる」「前例のないエンタメが今夏幕を開ける!」「“限界突破!アドベンチャードラマ”始動!」と書かれていました。「冒険」「アドベンチャードラマ」は希少なジャンルであり、さらに「限界突破」することで「前例のないエンタメ」に昇華させるということでしょうか。

少なくとも「VIVANT」序盤の本質は、「逃げただけで終わった」「ストーリーがスカスカ」ではなく、「逃亡劇を徹底的に追求することで見たことのない作品にしよう」というスタンス。映像のスケールやハラハラドキドキの逃亡劇を見せて「凄い」「痛快」という感情につなげようとしている意図が伝わってきました。

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