賛否両論の話題作「VIVANT」と「半沢直樹」決定的差 同じ堺雅人主演、福澤監督の両作に明確な違い
また、スマホなどの小さい画面で見た人も同様に「事前に聞いていたらテレビで見たのに」という人がいたかもしれません。映像のスケールや努力の跡は、一度でもテレビ画面で見たらわかりそうなものだっただけに、この点はもったいなかった感があります。
先を見据えた日曜劇場と福澤監督
もう1つ、制作サイドがPR戦略で伝え切れていなかったのは、業界最長の約67年もの歴史を持つドラマ枠「日曜劇場」と、その第一人者である福澤監督が前例のないチャレンジをすることの凄み。予算面でハイリスクであるほか、精神・肉体両面での負担を考えると、なかなか他局にできるチャレンジではないでしょう。
その背景に感じられるのは、「国内の放送収入だけで稼げる時代は終わった。これからは海外を含めた配信でも稼いでいかなければいけない」「そのためにはNetflixなどの作品にも勝っていかなければいけない」という危機感。相変わらず国内のメディアは視聴率ばかりを報じていますが、国内屈指のドラマ枠と演出家は先を見据えているからこそ、リスク覚悟のチャレンジを選んだのではないでしょうか。
そんな「VIVANT」に唯一の懸念材料をあげるとしたら、脚本のクオリティー。もともと福澤監督のかかわる作品は、「演出主導でそれに脚本が合わせていくという傾向がある」と言われていました。決して脚本を軽視しているわけではないものの、「大物脚本家に1作丸ごと任せて書いてもらう」というケースはほぼなく、中堅の2~4人で構成し、実際に今作でも4人の脚本家が名を連ねています。
ましてや、これまで原作のある作品が多かった福澤監督が初めて原作を手がける「VIVANT」は、脚本のクオリティーが未知数。プロデューサーも含め、演出で楽しませながら、脚本でもどのように引きつけていくのか。演出に力を入れた作品だからこそ、全10話の成否を分けるのは脚本なのかもしれません。主演級をそろえた豪華キャストの演技だけでなく、「日曜劇場と福澤監督の進化が見られるのか」も注目ポイントと言っていいでしょう。
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