賛否両論の話題作「VIVANT」と「半沢直樹」決定的差 同じ堺雅人主演、福澤監督の両作に明確な違い
だからこそ「どんな物語?」と聞かれても答えるのは難しい一方で、「どんなシーンがよかった?」と聞かれたら答えやすいのではないでしょうか。これまで福澤監督が手がけてきた作品は、池井戸潤さんの小説に限らず「善悪がはっきり分けられ、つねにヒリヒリとした戦いのムードを漂わせつつ、結末でスカッとさせる」という特色がありました。そんな時代劇にもたとえられた「正義が悪を成敗する」というわかりやすいベースが「VIVANT」の序盤にはありません。
テーマやゴールを伏せて考察を加速
確かに誤送金や架空の国の話は難解ですが、それ以前に「物語のテーマが何で、どんなゴールへ向かっているのか」をあえて伏せていることが「わかりづらい」という声につながっているのでしょう。
たとえば「半沢直樹」のように、「半沢が大ピンチを切り抜けて、週替わりの敵をクライマックスで倒して、みんなで盛り上がろう」という勧善懲悪の物語ではないのです。むしろ「VIVANT」は福澤監督自身、「誰が敵で誰が味方なのか、視聴者の予想を次々と裏切っていくエンターテインメント」と語っていました。むしろ物語のテーマやゴールを伏せるほか、謎を次々に提供して「考察で盛り上がってもらおう」という姿勢が感じられます。
実際、「VIVANT」の意味を筆頭に、乃木憂助(堺雅人)の過去やもう1つの人格、なぜ警視庁公安部・野崎守(阿部寛)はあれほど乃木を守るのか、テロリストやCIAの関与はあるのか、役所広司さんと二宮和也さんが演じる親子との関連性など、謎が目白押し。主役級の人気者に加えて外国人の俳優も多いため、さまざまなキャラクターが裏切り者に見える面白さもあり、考察は回を追うごとに盛り上がるのではないでしょうか。公式X(旧名ツイッター)で「皆さんの今後の感想・考察、お待ちしております」と呼びかけるなど、制作サイドが意図的に仕掛けていることが、そのスタンスを裏付けています。
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