政治主導で電力供給策を示し、独占体制解体の第一歩にせよ
東日本大震災により、東北地方、北関東の失われた国富はあまりにも大きく、15兆~25兆円とも見積もられている。日本全体で支えなくてはならないが、工場の被災によるサプライチェーンの分断や計画停電で、生産は落ち込み、輸出も減退している。
電力需給が経済振り回す
社団法人経済企画協会が集計したエコノミスト(機関)の実質GDP成長率予測(年率換算)は、2011年1~3月期がプラス1・73%からマイナス0・22%に、4~6月期はプラス1・87%からマイナス2・83%にそれぞれ下方修正されている。
見方が分かれるのが7~9月期だ。集計ではプラスではあるものの、2・03%から1・88%にわずかに下方修正された。震災だけなら、7~9月以降は回復を見込むというのが共通した見方になっただろう。
日本の現場の底力は強く、現地の交通インフラは着実に回復してきた。工場も、悲観的な見方が強かった半導体においてもエルピーダメモリ、ルネサスエレクトロニクスなどで相次いで操業が再開されてきている。
しかし、福島第一原子力発電所事故とこれに伴う電力不足が、日本経済の先行きを不透明なものにした。BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、7~9月期GDP成長率も見通しをマイナス4・9%と大きく下方修正した。「景気悪化の主因は電力不足による供給制約。復興そのものでも、電力不足によるボトルネックなどさまざまな供給制約が阻害要因となる」とする。
一方、供給制約はそれほど長引かないとの見方もある。みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは「夏場の電力不足期まで、まだあと2か月が残されており、産業界にはある程度の対応が可能。9月になって電力不足が解消されれば生産を増やす動きが相次ぐ」と見る。
いずれにしても、カギは夏場の電力需給である。