大震災を日本変革へつなげるための条件--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト

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大震災を日本変革へつなげるための条件--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト

第2次世界大戦後、日本がこれほどまでに海外のメディアで好意的に報道されたことはなかったのではないだろうか。韓国の新聞ですら、厳しい状況の下で日本の人々が自己抑制した行動を取ったことを称賛していた。韓国が好意的な報道をしたことは、決して小さな出来事ではない。

しかし、日本政府に対しての報道はトーンが異なっている。海外の専門家、援助チーム、政府のスポークスマンは、東日本大震災後の日本政府の声明の信頼性を疑い、その透明性の欠如に対して大きな不満を漏らしている。日本政府が、重大な問題に言及するのを避けたり、意図的に事実を隠したり、事態を過少評価しているように見えたのだ。

より深刻なのは、日本政府の責任者が誰なのかがわからなかったことだ。政府は東京電力の担当者によって情報のらち外に置かれているようだった。菅直人首相は東電の役員に「いったい何が起こっているのか」と問いただす必要があった。首相ですら何も知らないとなると、状況を知るための手段はどこにあるのだろうか。官僚たちも、政治家と同様に無力なように見えた。

日本国外では、「日本の文化は特異なので、物事は日本独自のやり方で進められる」と広く信じられている。こうした受け止め方は、すべてが間違いというわけではない。

たとえば、文化の重要な側面に言葉の使い方がある。日本の官僚は、事態が悪化した場合に責任を取るのを避けるために、時々意図的にあいまいな発言をすることがある。それは、どこの国でも見られる傾向だが、そうした発言が翻訳されると、意味が失われてしまうことがある。日本の官僚が「善処する」と言うとき、それは「ノー」を意味している。だが、それが国外の人間にうまく理解されるとは限らない。

ただし、大震災に関する日本政府のまずい対応は、そうした文化的な異質性で十分に説明できるものではない。日本国民も、外国人と同じく、政治家の対応や東電の担当者の言い逃れに対して批判的だった。

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