大震災を日本変革へつなげるための条件--イアン・ブルマ 米バード大学教授/ジャーナリスト

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 多くの国民はこうした問題をすでに認識している。だからこそ、09年に民主党政権を成立させ、50年以上に及ぶ自民党の実質的な一党支配打破を支持したのである。民主党は、公約の一つに「政治システムの透明性向上」を掲げ、官僚の権限を縮小し、政治家の権限を高めることを目指していた。

大震災は日本の政治の行く末を決める分水嶺になる可能性がある。もし未経験な政府がすべての責任を負わされた場合、国民は「透明性の低い温情主義」へと逆戻りすることを願うかもしれない。

他方、古いやり方は解決策になるのではなく、それこそが問題であることを国民が認識すれば、民主的な改革が実現されるチャンスはある。そうした改革は、日本を覆い尽くしている暗澹(あんたん)たる状況に差す一条の光になるはずだ。

Ian Buruma
1951年オランダ生まれ。70~75年にライデン大学で中国文学を、75~77年に日本大学芸術学部で日本映画を学ぶ。2003年より米バード大学教授。著書は『反西洋思想』(新潮新書)、『近代日本の誕生』(クロノス選書)など多数。

(週刊東洋経済2011年4月30日−5月7日合併号)

記事は週刊東洋経済執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。
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