世界史「学ばない人」「学ぶ人」大きな差が出る理由 社会に出た今こそ身につけたい教養とは?
授業中に、私が受講生に毎回伝えているフレーズがあります。それは「この用語がなぜ大切なのか、歴史において果たした役割や重要性を常に考えるクセをつけること」。歴史にどんなツメ痕(あと)を残したのか、意義や重要性に注目できれば印象が深まり、世界史に対する関心も生まれて用語を生きた知識として身につけることができます。
この部分に焦点が当てられれば、人間が本能的に備えている知的好奇心が刺激されて有機的な学習になるのですが、定期テストや入試の現場ではなかなかそうはいきません。下の問いをご覧ください。
②1804年にフランス皇帝となったナポレオンは、「B」。
Aの正解はナポレオン(ナポレオン1世、ナポレオン゠ボナパルト)で、Bの正解例はヨーロッパ中に自由主義・国民主義を広めた、です。ここでBヨーロッパ中に自由主義・国民主義を広めた、という歴史的な意義・重要性は、Aナポレオンという人名と同等以上に重視されるべきです。言い換えれば、両者の重みは、
「 A ≦ B 」
ということです。でも、テストにおいては「解答の客観性・公平性」が最優先されるため、どうしてもAナポレオンという客観性が高い単語の方にスポットがあてられて、
「 A > B 」
になりがちなのです。するとAナポレオンという文字列を丸暗記する学習で完結してしまうんですね。一方でBを記述形式で出題した場合、様々な別解が生じてしまって正解の基準設定が難しくなりますし、また記述形式の採点では採点者の主観が多少なりとも入ってしまうため、出題が避けられてしまいがちなのです。
Aの記憶だけに縛られる学生時代を過ごしていた人が、大人になってからBの面白さに気づく。多くの社会人の方は、このような状況にあるのではないでしょうか。学びを進めるうちに、「高校生の頃、先生が『これ、テストに出るぞ~』と言ってた理由がやっと分かった」と気づくことができれば、Bを意識できている証拠です。まとめますと、
誤:「テストや入試に出るから、この用語は重要だ」
↓ではなく
正:「この用語には〇〇という重要性があるから、知っておく価値がある」
という発想の転換がカギ、ということですね。その上で、Aに相当する知識を習得できれば、知識が体系的に蓄積されていくことにも喜びを感じられるはずです。
自分好みに世界史を切り取って楽しめば、大きな財産に
最後に、学び直しを志す際に「世界史をすみずみまでマスターしなければ!」と気負ってしまう方がいらっしゃいます。全地域・全時代に精通できればこの上ない教養となるのですが、途中で挫折してしまう恐れもあります。
そこで、最初はお好みの範囲を好きなだけつまみ食いするようなやり方をおすすめします。「古代中国が大好き」「戦後史に全振り」、と自分好みに世界史を切り取って楽しめばそれだけでも大きな財産です。
さらなる興味が湧いたならば、その時に他の範囲に手を伸ばせばよいのですから。
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