世界史「学ばない人」「学ぶ人」大きな差が出る理由 社会に出た今こそ身につけたい教養とは?

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この状況に不満を募らせたロシアは、ソ連時代から巨大な軍港があったクリミア半島の「併合」を2014年に宣言して実効支配下に置きました。ウクライナ国内の親欧米派と親露派の抗争につけこむロシアの戦略はその後も継続され、2022年のウクライナ侵攻に至りました。クリミア半島はロシア本土からするとウクライナ領をまたいだ「飛び地」であったため、ウクライナ東南部の「編入」には、クリミア半島をロシア本土とつなげてしまおうとする意図が伺えます。

これら一連の動きを見てみると、ロシアによる侵攻は18世紀から続く黒海・地中海方面への南下政策の延長線上にあることが分かります。またウクライナ領「編入」がトントン拍子に進めば、強権的なプーチン政権の国内での人気取り・ガス抜きになったかもしれません(上述した②と同質の目的です)。

しかし、ロシアの思惑とは裏腹に戦いは長期化して多大な犠牲を払うことになり、政権は国内の不満を抑え込むのに躍起になっている状況です。あわよくば政権の支持拡大をも期待して始めた戦争が逆に政権にとって痛手になる、これは歴史上頻繁に見られる光景です。

2.「今日現在」の日本の政治に関心を寄せる

平成28年から、選挙権年齢が18歳に引き下げられました。これは、高校生にとって世界史と今日の政治を結びつける機会が増えたことを意味し、世界史を教える人間としてはとても有意義に感じています。

数年前、「フランス革命で普通選挙をめぐって権力闘争が繰り広げられ、反対者はギロチンで即日処刑!」という内容を授業で扱った翌日が参議院議員選挙の投票日、ということがありました。やはりインパクトが大きかったようで、授業後に「明日の選挙に行く気になりました」とか「自分はまだ18歳になってないのが悔しいです」と生徒さんが話しかけに来てくれました。世界史の内容が身近な政治活動と結びついたわけです。

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