「診療に関連する死=医療事故」とはいえない理由 医師が解説「医療事故の仕組みと制度のこと」
先の医療事故調査制度は、「安全、安心な医療を提供する(医療安全の確保)ため」に、「他の医療機関で起きるかもしれない同様の事故を防止すること(再発防止)」を目的としています。
事故調査制度を担当する一般社団法人日本医療安全調査機構に、どんなことを報告すればいいか、その事案を限定するにあたり、何を「医療事故」とするかという観点から生まれたのが、この定義です。
もちろん、法律上の「医療事故」が定義される以前から、“いわゆる医療事故(医療機関内で発生した人身事故全般)”が存在し、前述のように、民事紛争になることがそれなりにありました。
1999年に起こった2つの事件
日本で医療事故といえば、必ず取り上げられる2つの事件が1999年に起きています。いずれも刑事事件となりました。
印象的な年月日としても忘れられないのが、平成11年1月11日の横浜市立大学医学部附属病院の「患者取り違え事件」と、2月11日の都立広尾病院の「薬剤取り違え事件」です。
元検察官の研究(飯田英男『刑事医療過誤Ⅱ[増補版]』、判例タイムズ社)によれば、戦後から1999年1月までの裁判件数は137件(そのうち公判請求事件は73件)、1999年1月から2004年4月までは79件(公判請求事件は20件)で、下のグラフのように1999年から、医療刑事事件届出数が著しく増加しました。
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