さらに、「女性の飲酒は乳がんのリスクを高めます」と木村さんは言う。
国立がん研究センターが、1990年と1993年に国内の10カ所の保健所管内に住む40〜69歳の約5万人の女性を対象に生活習慣についてアンケート調査を行い、2006年まで追跡調査した。
その結果、エタノール換算で週150gより多く飲酒するグル-プは、飲酒しないグル-プに比べて、乳がんリスクが1.75倍(約75%)も高くなることがわかった。
なぜ飲酒は乳がんのリスクを高めるのか。お酒に含まれるエタノールが分解されるときにできるアセトアルデヒドの発がん性、アルコールによる女性ホルモンへの影響などが考えられるが、まだはっきりとはわかっていないという。さらに女性が飲酒した場合、リスクが高くなるのは乳がんだけではない。
「多量飲酒は女性ホルモンの分泌を低下させるので、月経不順や無月経などを引き起こすこともあります。そして、女性はただでさえ閉経後に骨密度が下がりますが、過度の飲酒は骨密度を低下させるため、骨粗鬆症になるリスクも高まります」(木村さん)
また女性の場合、多くの人が知っていることだが、妊娠中は飲酒をしてはいけないとされている。妊娠中の飲酒は胎児に悪影響を与える恐れがあるためだ。またアルコールは母乳に移行するため、授乳中も飲酒は避けたほうがいい。
「妊娠中に飲酒すると、おなかの中の赤ちゃんが『胎児性アルコール・スペクトラム障害』になり、低体重や脳の障害などを負うことがあるのです。また授乳中に過度な飲酒すると、アルコールは母乳に移行するため、赤ちゃんに傾眠傾向(軽い意識障害)や発育不全などが起こるリスクがあります」(木村さん)
女性が依存症にならないためには
このように、女性にさまざまなリスクをもたらす多量飲酒は、どのようにすれば予防できるのか。まずは、適切な飲酒量を知ることから始めたい。
「女性のアルコールの適量は、男性の半分です。純アルコール量に換算して、男性が1日20g以下ですから、女性は1日10g以下になります。20gは、ビールでいうと中瓶1本。10gなら、その半分になります」(木村さん)
「適量は驚くほど少ない」と感じる女性もいるだろう。だから「1日ずつで考えるのではなく、1週間のタームで考えるのがいいでしょう」と木村さんはアドバイスする。週に純アルコール換算70gで、週3回飲酒するとすれば、「ビールの中瓶1本」が2日、「ワインをグラス1杯」が1日、といった計算になる。
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