1つは、「台風の常襲地帯、自然災害に強い島づくり」だ。台風等の災害時の停電、ダムの渇水時や水力発電(主に1960~1970年代に設置されたもの)の点検などで、電力の安定供給が難しい状況があることを想定して、BEVを分散型電源として活用して対応する。
また、BEV充電ステーションに大型の定置型蓄電池を内蔵することと、水力発電による水素製造と水素貯蔵による災害時の電力供給システムを構築することも必要だとした。
もう1つは、RE100(再生可能エネルギー100%)を目指すため、CO2排出量の大部分を占める熱利用の再エネ転換だ。具体的には、農林水産業と民生部門で化石燃料を使う温水ボイラーの、電気ボイラーへの転換を挙げている。
そのうえで、現状の水力発電を最大限に活用することを基盤として、将来に向けた社会や自然の「共生と循環」を掲げ、島内での新しいエネルギーマネージメントシステム構築図を示した。
これについて、筆者は荒木町長に「新しいエネルギーマネージメント実現に向けて、どのような時間軸を想定しているのか」と聞いた。これに対して「なかなか、難しい質問だ」と前置きをして、まずは少し前の時代を振り返った。
現実的なアプローチを望む
鹿児島県には、1992年度に県総合基本計画の戦略プロジェクトとして立ち上げた「屋久島環境文化村構想」があった。世界自然遺産に登録に向けた、基盤づくりの構想だ。
そうした「共生と循環」を目指す中で「(私の前の屋久島の)首長がゼロエミッション、カーボンフリー……といろいろなことを取り組んだが、具体的に先に進まなかった」という経緯を紹介し「町や県が(さまざまな施策を)やっても国が本腰を入れないなど、歯がゆい思いがあった」という本音も漏らした。
こうした大きな事業を行ううえで、町の財政が豊かであるとは言えない状況であるため、今回のような「企業との連携が大事だ」とする。社会変化を起こすための、現実的なアプローチの重要性を強調した。
そして、荒木町長は「人とのめぐり逢いがあってこそ、実現できる。何ごとも相手がいることなので、(相手の事業がうまく進むよう)私たちも対応しないといけない。(そのうえで質問の)時間軸については、1日も早く実現したい」というにとどめた。
屋久島町観光まちづくり課は、町が目指すBEVを含めた総合的な環境事業計画を屋久島電工等も交えて協議し、今年度中に取りまとめを発表する予定だという。
「脱炭素に一番近い島」は、果たして次のステージ向けて新たなスタートを切れたのだろうか。今後も屋久島町の未来に向けたチャレンジを継続的に見守っていきたい。
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