辻村深月「凍りのくじら」感想文をプロが書くと… 学生必見!書評家・三宅香帆さんが書き方を解説

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ここでは印象に残った場面について書いていますが、キャラクターや台詞でも構いません。とにかく「自分の体験と照らし合わせること」が重要です。自分の体験を細かく書けば、原稿用紙も埋まるので、ぜひ細かく書いてみてくださいね。

まとめは「未来の自分がどうしていきたいか」

こんなふうに、いくつか印象に残った場面と、その感想の分析が書けたら。最後にまとめを書いて、終わりです。

まとめ。それは、読書体験を経て、「自分はどうなりたいか」をまとめにするのです。たとえば、こんなふうに。先ほどの例文から続けて、書いてみますね。

理帆子が学校外の友達と遊ぶ前に、内面を言語化する場面。私は『凍りのくじら』という小説を読んでいるなかで、そこがとくに印象に残りました。
(中略)
『凍りのくじら』を読んで、私は自分自身でひとりきりの時間をもっと楽しむことができるんじゃないか、と感じました。
理帆子がやっていたように、自分の好きなものや好きな作品について、考えれば考えるほど、「不在」は埋まる。
理帆子が藤子・F・不二雄の作品を通して、救われたような感覚になったように。私もまた、自分の好きなものを楽しむ時間を、もっとつくろう、と感じたのです。

ここはなんでもいいのですが、とにかく「未来の自分がどうしていきたいか」を書くと、読書感想文のまとめらしくなります。

前回の記事でも書きましたが、とにかく読書感想文で求められていること。それは、この本を読んで、学生さん自身がどう良い人間に変わったのか――その「読書体験」です。

だからこそ読書感想文においては、「未来の自分がどうしていきたいか」を書くと、それらしいまとめになります。

もちろんこれはあくまで学校用のテクニック。自分の好きな作品について語りたい、というだけならば、こんなまとめは必要ありません。しかし学校の読書感想文では、「まとめ」があったほうがいいのも事実。

①具体的に「好きな点」「良かった点」をメモ
②なぜそこが良かったのか? を書く(自分の体験も交えつつ)
③本を読んだ後「自分がこれからどうなっていきたいか」をまとめにする

ぜひこの3点の流れを踏まえて、読書感想文を書いてみてください!

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三宅 香帆 文芸評論家

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みやけ かほ / Kaho Miyake

1994年生まれ。高知県出身。京都大学大学院人間・環境学研究科博士前期課程修了。天狼院書店(京都天狼院)元店長。2016年「京大院生の書店スタッフが「正直、これ読んだら人生狂っちゃうよね」と思う本ベスト20を選んでみた。 ≪リーディング・ハイ≫」がハイパーバズを起こし、2016年の年間総合はてなブックマーク数ランキングで第2位となる。その卓越した選書センスと書評によって、本好きのSNSの間で大反響を呼んだ。『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社新書)、『人生を狂わす名著50』(ライツ社刊)、『女の子の謎を解く』(笠間書院)『それを読むたび思い出す』(青土社)など著書多数)。

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