上野:以前は隣町へ行くような感覚で、気楽にホイホイとニューヨークとかに行ってましたが、今は出かける前から面倒だなあ、何でこんな予定を入れたんだろうってうんざりしています。そんな自分にドキッとして、こんな気分若いときには考えられなかったですね。
樋口:私が最後に行った海外は北欧。確か80歳と数カ月だったかしら。年寄りばかりの旅行だったんですけれど、80代は私ともうひとりだけで、あとは70代。80代は70代の人より何となく行動が遅れがちなのよ。ああ、これは足手まといになるなと思って、それが最後になりました。
何かの機会に車いすで旅行する機会があれば行ってもいいけど、いわゆる普通のツアーで行くのは限界ね。寂しいですよ。海外旅行、好きだったから。
80代のクラス会に出てみたら
上野:つきあいはどうですか。わたしは親戚づきあい、近所づきあい、クラス会、法事……全部やってません! 社会活動以外はそっくりやめています。皆さん、年をとってもやってるんですか?
樋口:私は、高校のクラス会にこの間参加しました。でも、87歳ともなりますと、ひとりで出てこられない人がかなり増えるの。全員揃うと120人のクラス会なんですが、結果として集まったのは40人弱。そのうちひとりは車いすに座って、家族の付き添い付きでした。担任の先生が100歳の男性で一番お元気なのよ。だからクラス会は今後もあっさりやめるのではなくて、名簿で管理するという形で続けるようです。ただ、集まるのは80代後半が最後のような気がしますね。
上野:クラス会って、いったい何が面白いんですか? 顔を見ても名前を思い出せないでしょう?
樋口:うん、わからない人がいっぱいいる。
上野:でしょう? そういうところに行って、何が面白いのかしら。
樋口:まわりの親しい人へのつきあいですなあ。それと好奇心。
上野:義理ですか?
樋口:義理ではなくて、一所懸命やってくれる人のなかにはかなり親しい人がいるから──ということは、やっぱり義理ね。でも、それぞれの消息を聞くのがまた楽しいのよ。上野さんは高校のクラス会にも行かないの?
上野:いっさい行きません。でも、クラス会って好きな人は好きですね。何が楽しいのかしら。
樋口:あえていえば、80代後半って、生活の彩りが何もなくなっちゃってるわけです。そんななかで何かあるというのが面白いのよ。そんな人生後半の彩りになっていた集会が、幕を下ろしていくのは寂しいといえば寂しいわね。
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