日銀会合前後で株価が乱高下したらどうすべきか 「割高な米国株」「買われすぎの日本株」は修正へ

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連銀がインフレ退治のためにできることは、金融引き締めにより景気を悪化させ、家計や企業がモノやサービスを購入できる量を減らすことで、需給関係から物価を押し下げることだけだ。

もちろん連銀幹部は「アメリカの景気をぶっ壊す」とは言わない。また、「景気をあまり傷めずに物価を抑え込みたい」とは考えてはいるだろうが、本音では「むしろ健全な景気後退が生じたほうが、大きな流れでの経済成長は持続しやすい」と考えているはずだ。投資家は「バブルでも何でもいいから、永遠に景気が拡大し続けて株価が上がり続けてほしい」という願望を抱きがちなものの、現実には「山あり谷あり」だろう。

アナリストは冷静に業績予想を下方修正、PERは割高に

実際のところ、市場における景気楽観論にもかかわらず、企業アナリストは冷静だ。同国の代表的な株価指標であるS&P500種指数の採用企業について、1株当たり利益を集計すると、昨年10~12月期は前年同期比3.7%減益と、コロナ禍以来の減益に突入し、今年1~3月も同1.3%減益であった。

現在、決算発表が本格的に始まった4~6月期の業績は、14日時点では同6.3%減益で着地すると見込まれている(ファクトセット社調べ、一部の実績値を含んだ予想)。これは、3月末時点の3.2%減益予想、あるいは6月末の6.1%減益予想から下方修正されている。

さらに、先の7~9月期については同0.9%の増益に転じると予想されている。だが、これも3月末時点の2.8%増益見通しや6月末時点での1.1%増益見通しから下方修正されており、7~9月期が減益予想に転じる可能性も否定できない。

こうした企業業績の陰りを無視して、アメリカの株価は上に向かっている。そのため、S&P500の予想PER(株価収益率)は先週の平均値で19.3倍と、通常のレンジである15~18倍の上限を上回り、株価の割高感を示している。足元の水準は、過去にピークを形成した際の、2018年1月下旬の18.8倍(その後2018年末にかけて株価は下振れ)、2020年2月の19.0倍(その後コロナ禍による大暴落)に、ほぼ並んだ状況だ。

もちろん、筆者はいつものように大変強気なので、例えば2020年のような35%ものNYダウの下落がこれからやってくるなどとは、まったく見込んでいない。リーマンショックが再来するわけでもなかろうし、同国株は1割強の「普通の株価下落」で済むだろう。

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