日銀会合前後で株価が乱高下したらどうすべきか 「割高な米国株」「買われすぎの日本株」は修正へ

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では、あらためて日本株の今後はどうなるだろうか。冒頭で述べたように、次第に頭が重くなってきているように見える。ただ、13日の引け前後からその後の時間外取引で、あるいは14日の寄り付きあたりで見られたように、先物を利用した短期筋の投機買いはまだ息絶えていないようだ。

それでも、「ウォーレン・バフェット氏が……」「低PBR(株価純資産倍率)企業の経営改善が……」「日本のデフレ脱却が……」といったような「ネタ」に飛びついた海外短期筋の先物買いや、これまで当コラムで語ってきた「ツーリスト投資家」の現物買いは、だいぶ勢いを失ってきている。

筆者は「日経平均の下値メドは2万7000円辺りまでにとどまる」といった短期予想を堅持する。前述のような米国株の1割程度の下落見通しに加え、ドル安円高方向への巻き戻しの持続、海外勢の買いの一巡といった日本株の下落材料を大いに並べても、直近の高値からたった2割程度の反落しか生じないと予想しているわけだ。

筆者からすれば極めて強気な見通しを立てているわけだが、その理由は、これから日本株が下落しても、それは砂上の楼閣の上にさらに楼閣を積み上げたような買われすぎが、自律的に「自壊」するだけであって、日本経済や企業収益に深刻な悪化が生じるわけではない、と見込んでいることによる。

短期は波乱に注意でも、長期投資家は達観を

ただし、ごく短期的には、27~28日の日本銀行の金融政策決定会合が、短期筋の格好のおもちゃにされるおそれがあり、注意を要する。

筆者のところにも、海外投資家からの問い合わせが極めて多い。この会合においては、日銀がYCC(イールドカーブコントロール)を修正ないし撤廃するとの観測が膨らんでいる。ただし、それは「YCCの副作用を考慮したためにすぎず、ほかの金融緩和策はまったく変更しないし、金融緩和の出口を意味しない」と日銀が説明する、とも見込まれている。つまり、日銀は市場を揺らさないように努める、というわけだ。

とはいうものの、YCCの修正をめぐっての事前の思惑、あるいは実際の修正の有無を受けて、投機筋が大声で騒ぎ、日本の株価指数先物や債券先物、円相場などについて、仕掛け的な売り買いが交錯した結果、極めて短期的に日本の株式市場だけでなく、世界の諸市場が荒れるおそれがある。

しかし、長期投資家は「それは目先の波乱にすぎない」と達観し、市場の上下動に動揺しないことが肝要だろう。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

馬渕 治好 ブーケ・ド・フルーレット代表、米国CFA協会認定証券アナリスト

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まぶち はるよし / Haruyoshi Mabuchi

1981年東京大学理学部数学科卒、1988年米国マサチューセッツ工科大学経営科学大学院(MIT Sloan School of Management)修士課程修了。(旧)日興証券グループで、主に調査部門を歴任。2004年8月~2008年12月は、日興コーディアル証券国際市場分析部長を務めた。2009年1月に独立、現在ブーケ・ド・フルーレット代表。内外諸国の経済・政治・投資家動向を踏まえ、株式、債券、為替、主要な商品市場の分析を行う。データや裏付け取材に基づく分析内容を、投資初心者にもわかりやすく解説することで定評がある。各地での講演や、マスコミ出演、新聞・雑誌等への寄稿も多い。著作に『投資の鉄人』(共著、日本経済新聞出版社)や『株への投資力を鍛える』(東洋経済新報社)『ゼロからわかる 時事問題とマーケットの深い関係』(金融財政事情研究会)、『勝率9割の投資セオリーは存在するか』(東洋経済新報社)などがある。有料メールマガジン 馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」なども刊行中。

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