金総書記の妹が《大韓民国》と括弧でくくった訳 北朝鮮流の皮肉を込めた表記で対立を深める

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2022年8月に開催された、「全国非常防疫総括会議」に出席した北朝鮮の金正恩朝鮮労働党総書記の妹、与正・同党副部長(写真・朝鮮中央通信が2022年8月14日配信したもの、AFP=時事)

正式国名を記号で囲むと悪口になる――。そんなニュアンスの談話が、北朝鮮から出された。

7月10、11日の両日にわたって発表された、朝鮮労働党の金与正(キム・ヨジョン)副部長の談話がそれだ。金副部長は、最高指導者である金正恩総書記の実の妹である。

7月10日の金副部長の談話は、前日に北朝鮮国防省の報道官が「アメリカ軍の空中偵察行為に厳重警告を送った」との声明に続く形で発表された。金副部長は「《大韓民国》のかいらい軍部一味が、いち早くアメリカ軍の重大な主権侵害事実を否認した」と述べた。

《》(二重山括弧)は「認めていない」という意味

そして翌7月11日にも金・副部長は談話を発表し、「《大韓民国》軍部」と表記した。この《》(二重山括弧)で韓国の正式国名である大韓民国を囲った意図は何かをめぐり、韓国をはじめ世界の北朝鮮ウォッチャーの関心を引いた。

これまで、北朝鮮による韓国の呼称は「南朝鮮」とするのが普通だった。これには「同じ民族である国家の南半分」という意味がある。では、二重山括弧は北朝鮮でどんな意味を持つのか。

北朝鮮の教育内容に準じた教育を日本の朝鮮学校で受けた在日コリアンは、「二重山括弧はおおよそセリフや固有名詞に使うが、例外的な用法がある。それは、書き手である北朝鮮から見ると、一般的用語だけど自分たち(北朝鮮)は認めていないという意味合いを出すときだ。主に敵対する勢力が使う用語だったり、そんな勢力を卑下したり皮肉を伝えたりするときに使う」と説明する。

また朝鮮学校の教科書でも、「この二重山括弧の部分にどんな意味があるか考えてみよう」という設問があるという。となると、金副部長ら北朝鮮指導部は、「現在の南朝鮮は同族の国ではない。同じ民族として相対することはしない」という意味にも取れる。

7月14日にも金・副部長は談話を発表したが、ここでも「拡大抑止」「核協議グループ」といった自らが受け入れがたい用語には《》をつけて表記している。

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