日韓関係改善へ今こそ「トラウマ」を克服すべき 小此木・慶大名誉教授に聞く戦略転換の必要性
――元徴用工問題や日本による対韓国貿易規制、韓国側による日韓軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の停止、韓国軍による海上自衛隊機に対するレーダー照射など、文在寅(ムンジェイン)前政権からこじれにこじれた日韓関係が、急速に改善の方向へ動き出しました。一連の動きをどうご覧になりましたか。
アメリカ、韓国を含めた東アジアの安全保障に対して、日本は戦略性が欠けていたのかなと思えてくる。バイデン政権は東アジアの外交・安保は日米韓の3カ国でやるしかないという強い考えがあった。
今回も、元徴用工問題への解決案が韓国側から出されると、すぐさまアメリカは歓迎の意向を示した。そのスピードも異常だ。それだけ、アメリカのコミットメントが顕著だった。
アメリカは日韓首脳が話し合うよう、強くプッシュしていた。日韓関係の改善は、バイデン政権の同盟外交に寄与するためだ。3月17日の日韓首脳会談に至る軌跡を見ていると、1983年1月に当時の中曽根康弘首相が就任後の初の外国訪問を韓国にして、全斗煥(チョンドゥファン)大統領との首脳会談を行った当時のことを思い出す。
1983年中曽根訪韓当時と似ている
――歴代首相では、初の韓国訪問で中曽根氏が歓迎晩餐会でのスピーチを韓国語で行い、また韓国の歌を韓国語で歌って大歓迎を受けた、日韓外交史では語り草になっている首脳会談ですね。
中曽根氏は「日本は戦略的なマインドを持っている」ということを韓国訪問でアメリカに示したかったのだと思う。当時の冷戦という状況の下、日本は隣国である韓国とも戦略的関係を結べますよ、と主張したかったのだろう。尹大統領も今回、アメリカに「戦略的な思考」ができることを示し、アメリカの同盟政策を強く意識しているために今回の行動で出たのではないか。
逆に今回、日本側は韓国に対するトラウマを強く持ちすぎていたのではないか。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら