日韓関係改善へ今こそ「トラウマ」を克服すべき 小此木・慶大名誉教授に聞く戦略転換の必要性

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それに加え、現在の日韓関係の質そのものが変化していることも念頭に置くべきだ。とくに世代交代が進めば、日韓関係も変わってくるのではないか。

――世代交代といっても、「現在の若者が歳を重ねた将来には日韓関係も変わる」ということが、日韓双方でこれまでも言われ続けてきました。それにもかかわらず、日韓関係がよくもならず、逆に悪くなったという印象を記者は持っていますが。

いや、世代交代は確実に起きていると思う。長い目で見ればはっきり起きている。もちろん、短期的に浮き沈みはあるだろうが、若い世代は今、日韓共に共通の、普遍的な価値を持っている。韓国に対して非常にピュアで、歴史にそれほど関心がないということもそうだ。

米韓首脳会談の結果にも注目すべき

――記者は50代ですが、高校・大学生の子どもを持つ同世代の親から「子どもが韓国に留学すると言っているのだが……」と相談を持ちかけられることが明らかに増えました。例えば韓国のBTSが好きで、その延長で韓国語を学びたい、韓国に住みたいというのが大きな理由のようです。

BTSをはじめ、韓流文化もこれまでと違う受け止め方をしているのではないか。2000年代の韓流、例えば「ヨン様」(ペヨンジュンさん)ブームの時、日本のファンたちはまだ韓国という存在に腰が引けていたような印象だった。ヨン様は好きだけど、韓国はどうなんだろうというような。しかし、今はまったく違う。若い男性も女性も積極的だ。このような若い世代が日韓関係に好影響を与えていくのではないか。

――4月26日の米韓首脳会談には何を期待しますか。

安保面では両国間に問題はないだろう。尹大統領とすれば、日韓関係の改善というアメリカの心配ごとをそれなりに解決したうえでの首脳会談だ。この点ではスムーズに話し合いが進むだろう。

おこのぎ・まさお/1945年群馬県生まれ。慶應義塾大学法学部卒、同大大学院博士課程単位取得退学。同大教授、法学部長などを務める。『朝鮮分断の起源:独立と統一の相克』『朝鮮戦争―米国の介入過程』など著書多数(写真・今井康一)

むしろ経済分野が心配だ。半導体や蓄電池などのいわゆる戦略物資を中心に、アメリカが経済安保を強く推し進めている。貿易などでアメリカの態度が厳しい、かつ一方的な要求を続けている。これに半導体などの主要生産国である韓国がどう対応していくか。ハードな交渉になるだろうし、これは日本にとっても他人事ではない。

だからこそ、日韓はともに協力できる余地がある。アメリカの厳しい要求にも、先進的な技術を持つ日韓が共同で対処すれば譲歩をも引き出すことは可能だ。これは中国やヨーロッパに対しても同じだろう。

(<核兵器しか選択肢にない北朝鮮という危険な存在>に続く)

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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