尹錫悦政権を日韓改善に走らせた韓国の内憂外患 ウクライナ侵攻と米中対立で半島情勢は一変

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日韓首脳夫妻の会食
3月16日、銀座のすき焼き店で会食する日韓首脳夫妻(写真・時事/内閣広報室提供)

韓国メディアなどで積極的な発信を続けている外交官出身の魏聖洛・元駐ロ韓国大使は最近の著書で、韓国外交の問題点を「5大沼」という表現で指摘している。「自己中心的で感情的」「国内政治に従属」「理念的で党派的」「ポピュリズム」「アマチュアリズム」で、その意味するところは韓国紙によると以下のような概要だ。

「保守」勢力と「進歩」勢力の対立が激しい韓国では、しばしば外交が国内政治のために利用される。外交路線も、親米で国際関係を重視する「保守」勢力と、どちらかというと親中で南北関係改善を優先する「進歩」勢力に分かれて対立している。

また韓国では、国民世論の支持が力を持っているため、外交がポピュリズムに支配されやすく、その結果、外交専門家の影響力が弱まりアマチュアリズムが生まれているというのだ。

外交政策決定過程の透明性が進んだ今日、欧米諸国をはじめ主要国の外交は魏氏が指摘するような問題を共通に抱えている。しかし、基本的外交路線をめぐって国内政治勢力が正反対の立場で争い、政権交代のたびに主要な外交政策が大きく変更される国は少ない。この点は確かに韓国の抱える問題点の1つであろう。

文政権の対外政策を180度転換

3月、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が主導力を発揮して公表した徴用工(日本統治下で動員された朝鮮半島出身の労働者)問題の解決策も、政権交代に伴う外交政策変更の1つだ。

日本企業に対する損害賠償請求を認めた大法院判決を受けて悪化する日韓関係を前に、前大統領の文在寅氏(ムン・ジェイン)は一切、動かなかった。これに対して2022年5月に就任した尹大統領は、就任直後から問題解決に向けて積極的に動き、今回の日韓首脳会談で冷却しきった両国関係を一気に改善させた。

だからといって尹大統領が満足しているわけではないだろう。

尹大統領の目的は日韓関係の改善だけではない。さまざまな脅威に直面している韓国の安全保障環境の改善が最終的なゴールであろう。そのために文政権時代、北朝鮮との対話を何よりも最優先し米韓同盟にさえ距離を置いた対外政策を180度転換しようとしている。尹大統領の挑戦はまだ始まったばかりだ。

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