尹錫悦政権を日韓改善に走らせた韓国の内憂外患 ウクライナ侵攻と米中対立で半島情勢は一変

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2022年3月の大統領選のわずか2週間前にロシアがウクライナに侵略しウクライナ戦争が始まった。世界はアメリカを中心とする西側諸国と、ロシア・中国との間の対立構図ができてしまった。

同時進行で米中対立はますます激しくなっていった。中国による台湾への軍事侵攻も現実味を持って議論されはじめ、韓国内では「台湾侵攻に合わせた北朝鮮の南進がありうるのでは」という議論が広がっている。

そんななか、2022年5月末、国連安保理が北朝鮮に対する制裁決議を初めて否決するという韓国にとっては衝撃的な出来事が起きた。この時の制裁決議は3月に北朝鮮が国連決議に反してICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験をしたことに対するものだった。

世界の分断が半島情勢を一変させた

北朝鮮に対する国連安保理の制裁決議は、核実験やICBM発射を受けて2006年以降2017年まで合計11回、中ロを含め全会一致で議決され、制裁が実施されている。

それが中国とロシアという常任理事国の拒否権発動で初めて否決されたのである。米中対立とウクライナ戦争による世界の分断が朝鮮半島を取り巻く状況を一変させてしまったことがあらわになった瞬間だった。

繰り返される安保理制裁決議で孤立感を強めていた北朝鮮は、世界の分断によって中ロという頼もしい後ろ盾を得ることができたわけで、これからは核兵器やICBMの実験を繰り返しても国連安保理決議に苦しめられる心配がなくなったのである。逆に韓国は、北朝鮮の暴走を止めるための国際社会の後ろ盾を失うという危機的状況に陥ったのだ。

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