北朝鮮「怒濤のミサイル発射実験」の先にあるもの 米韓軍事演習で激しくなっているプロバガンダ

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3月に行われた米韓合同軍事演習(写真: SeongJoon Cho/Bloomberg)

米韓合同軍事演習が行われる中、北朝鮮と韓国の非武装地帯にある共同警備区域(JSA)に緊張の色はまったくなかった。それどころか、北朝鮮人の姿はほとんどなく、不気味なほどの静けさに包まれていた。

かつて北朝鮮の警備隊が堂々と闊歩していた休戦地域にさえ、北朝鮮人の姿は1人も見当たらない。まれに、新型コロナのパンデミックが始まって以来、防護服を着て現れることがある、と国連軍司令部は教えてくれた。その日、JSAを横切る3人の北朝鮮兵が遠くに見えたのは、めずらしいことだった。

奇妙な静けさの背景では

この奇妙な静けさは、3月に5年ぶりに再開された大規模な米韓合同軍事演習に伴う、北朝鮮による激しいプロパガンダの波を裏付けていた。国営の北朝鮮メディアは、軍への入隊を熱望する10代の若者たちが、「アメリカに死を」と宣言する看板を掲げ、「アメリカを切り刻む」と誓う集会を映し出した。

4月3日に行われた日米韓の共同訓練に対して、北朝鮮は「戦争狂」と非難し、この「軍事的挑発」に自国の対応で応じることを約束した。

その数日前、北朝鮮の金正恩総書記の妹、金与正が、アメリカの核兵器配備を望むとされるウクライナを非難する声明を発表している。これは、アメリカが韓国に核を再配備することよる抑止力の強化を求める韓国側の声に、かろうじて応えたものと解釈されている。

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