核兵器しか選択肢にない北朝鮮という危険な存在 小此木・慶大名誉教授に聞く北朝鮮の抑止戦略

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2023年3月19日、ソウル市・龍山駅構内のテレビに映し出された、北朝鮮の短距離弾道ミサイル(写真・Kim Jae Hwan/SOPA Imaged LightRocket via Getty Images)
北朝鮮は4月13日、初の固形燃料型大陸間弾道ミサイル(ICBM)とされる「火星18」の発射実験を行った。2022年の60発以上に続いて、2023年に入ってすでに12発の弾道ミサイルを発射している。北朝鮮による核・ミサイルの脅威に、日本に対処できることはあるのか。日本を代表する朝鮮半島問題専門家である慶應義塾大学の小此木政夫・名誉教授に聞いた。
(2023年4月19日公開<日韓関係改善・今こそ「トラウマ」を克服すべき>の続き)


――2022年、そして今年2023年と北朝鮮が弾道ミサイルの試験発射を相次いで行っています。核兵器の開発に拍車がかかっているように見えます。

北朝鮮の核ドクトリンを見ていくと、戦略的、かつ戦術的に同時に進めていることがわかる。ただ、そんな国は北朝鮮しかない。

例えば2022年12月15日にインドがICBM「アグニ5」の発射実験を行い、射程距離が5000キロメートルにまで伸びた。この射程距離は、インドから中国全土をすっぽりと覆う距離だ。

インド側も、今回の実験はミサイルの軽量化と射程を伸ばす目的があったという指摘が出ている。こうやって徐々に軽量化と射程を伸ばしていくものだが、北朝鮮はそれを同時にやっている。

戦術核・戦略核を同時に開発する北朝鮮

――北朝鮮は2021年1月、朝鮮労働党第8回党大会で「核兵器の小型化、軽量化を発展させ、戦術核兵器を開発し、超大型核弾頭の生産も持続的に推し進める」ことを決定しています。これを現在、推進しているということでしょうか。

このときの報告には、非常に政治性がある。北朝鮮にとって「戦略核」とは、朝鮮半島へのアメリカの介入を防ぐために、アメリカ本土にまで到達できるミサイルのことだ。これは米韓分断、すなわち武力衝突が発生すればアメリカが韓国側に立つという米韓同盟の信頼性を毀損させようという目的がある。

一方で「戦術核」とは地域内で使われる核兵器のこと。例えば非武装地帯や黄海などで、南北間で武力衝突が発生したら使う。というよりも、そういった衝突を発生させないための威嚇や抑止力としての意味がある。

こういった北朝鮮の核兵器開発を見ていると、通常兵器が相当老朽化し、使えないものになっているのではないか。

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