「餓死者が発生」するほど北朝鮮経済はひどいのか 中朝国境「餓死者なんて聞いたことがない」

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2015年9月、平壌市郊外・将泉野菜専門協同農場では白菜が収穫を迎えていた。左側の赤地に白色で書かれているのは「野菜1作業班1分組」と農場内の生産組織の名前が書かれている。その左のグラフは、各農場員の成果を示している。当時、現場の権限を拡大し、農場員の生産へのインセンティブを促進する「圃田担当制」の成果を北朝鮮は誇っていたが…(写真・福田恵介)

慢性的な経済苦とされる北朝鮮で、餓死者が発生しているという報道が韓国を中心に流されている。

2023年2月末、韓国・統一省が「北朝鮮の一部地域で死者が続出するなど、食糧難が深刻だ」と明らかにした。また3月初旬、韓国メディアが「北朝鮮南部で餓死者が発生している」ほど北朝鮮の今春の経済事情が厳しいとの報道が相次いだ。北朝鮮南部は高麗朝(918~1392年)の都が置かれた開城(ケソン)周辺で、北朝鮮国内では相対的に裕福なほうとされている地方だ。

そういう地域で餓死者が発生するほど厳しいのか。北朝鮮はちょうど2023年2月26日から3月1日まで、朝鮮労働党の重要政策を議論・決定する党中央委員会総会(第8期第7回)が開かれ、議論の中心は農業問題と北朝鮮メディアが報道した。

前回の第8期第6回総会は、ほぼ2カ月前の2022年12月26~31日に開かれたばかり。短期間で国家の重要会議が2回も開催されたのは、「餓死者がでるほどの厳しい経済事情に対処するため」との指摘も広がった。

一方で、韓国の情報機関・国家情報院は2023年3月5日、「餓死者が発生した規模を正確に算定するのは難しい」とし、「餓死者が発生したとしても、北朝鮮の体制に脅威となる程度ではない」と述べた。

また前出の統一省も、「餓死者の発生は(1990年代後半の深刻な経済危機で、150万から350万人と言われるほどの餓死者を出した)『苦難の行軍』ほどの状況ではないという趣旨だった」と弁明している。

中国との貿易は徐々に回復

実際にどういう状況なのか。中朝国境の中国側で北朝鮮と関係を持つビジネスパーソンなどに聞いてみると、「餓死者が出た、あるいは出そうという話は聞いたことがない」とほとんどが口をそろえる。食糧や日用品など十分に供給されているとはいえないが、それでも「低位安定」はしている、という。

これには、中国とロシアという隣国の存在が大きいようだ。

2020年1月末に新型コロナウイルス感染症の拡大で国境を閉じた北朝鮮。今でも「国境を開放した」という公の発表はないが、徐々に中国やロシアとの貿易が再開している。とくに中国・大連と山東省龍口の港と、北朝鮮の南浦港には貨物船が往来して物資が北朝鮮に入っている。一方、中国・吉林省琿春などからも貨物が行き来しているとの証言がある。

また石油などの油類はロシアからタンカーで運ばれ、沖合で北朝鮮の船に積み替える、いわゆる「瀬取り」のやり方で入っているようだ。

いま北朝鮮が本当にほしいのは食糧と日常生活に使われる必需品だ。食糧、とくにコメについては年間80万トンほどが不足するという北朝鮮にとって、なんとしても確保したい物資。そのため、「北朝鮮当局は2022年の春ごろに同年秋からの食糧不足を見込んで、慌てて中国やロシアと食糧輸入の契約を結んでいた」(中国の貿易関係者)。

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