「餓死者が発生」するほど北朝鮮経済はひどいのか 中朝国境「餓死者なんて聞いたことがない」

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例えば、かつて中国などに留学など在留経験がある北朝鮮の個人でも、それまでの人脈を生かして商売したいとなれば、国家もそれを認めるという形で対外的な経済活動を増やすということのようだ。

話は戻るが、北朝鮮は2023年1月上旬に閉会した党中央委員会総会で、今年達成すべき経済指標と12の重要目標を定めた。12の重要目標のトップが「穀物生産」だ。

穀物増産のため国民に喝を入れるための会議?

そのため、前回の総会から時間をそれほど置かないまま改めて総会を開催したのも、「餓死者が出た」といった緊急性を帯びた開催ではなく、重要目標の最上位にある穀物生産=農業の成長発展を金正恩政権が最重要視しており、その目標達成を党幹部や国民に促す目的があったのではないだろうか。

だが、北朝鮮はこれまでも「農業の成長と発展」を絶えず目標として掲げてきた。2012年初から本格化した金正恩政権は、2010年代前半までに「圃田担当制」といった制度を実施し、協同農場など現場の裁量権を拡大させ、国家が買い上げる分以上の生産物は自主的に処分できるといった、市場経済的なインセンティブも与えることで生産量を増やそうとしてきた。

しかし、そういったインセンティブを促す制度による成果を誇る報道は、2010年代後半から北朝鮮メディアから出てこなくなった。今回の第8期第7回総会で発表された文書にも、生産意欲を湧かせるような言葉はほとんど見当たらない。

化学肥料や農業用機械の生産・供給量の増大という目標を必ずや達成させるという文言はふんだんに盛り込まれている一方で、具体的で有効な方法はあるのか。北朝鮮経済に課題は多く、解決策はそれほど見当たらないのが現状だ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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