ウクライナ戦争でロシアは弾薬不足に陥っているのか。戦線ではウクライナに押されているとされているロシアが、そのため北朝鮮から弾薬や砲弾などを購入している——。そういう話が広がっている。
2022年9月6日、アメリカ国防総省の報道官が「ロシアが北朝鮮から砲弾を購入している」との見方を示し、その後同年11月2日にはアメリカ国家安全保障会議(NSC)のジョン・カービー戦略広報調整官が「ロシアがウクライナとの戦闘に使うため、北朝鮮から相当量の砲弾の供給を受けた」と発表。カービー調整官はさらに同年12月22日、「北朝鮮がロシアの民間軍事会社ワグネルに兵器納入を終えた」と明らかにしている。
また日本のメディアも最近、11月に数百万ドル(数億〜10数億円)規模の砲弾やロケット弾などが、鉄路で北朝鮮からロシアへ送られたと報道している。
携帯型の武器や多連装ロケット砲など
一方、北朝鮮は2022年9月21日、国防省装備総局副局長談話という形式で「ロシアに武器や弾薬を輸出したことはなく、今後もそうした計画はない」と否定。同年11月7日には、在北朝鮮ロシア大使館が「(武器などを北朝鮮から購入したという話は)まったく根拠がない」と否定している。
ただ、2022年11〜12月にかけて、ロシアが北朝鮮にかつて販売した武器・弾薬などを北朝鮮から買い戻したという証言も出てきた。東洋経済の取材に応じたビジネス面で北朝鮮と関係が深い中華系実業家によれば、「携帯型の武器や弾薬などを北朝鮮からロシアが買い戻した」という。
この中には、多連装ロケットシステム(MLRS)10セットとその弾薬、榴弾砲などが含まれているという。この取引には、中米ホンジュラス国籍の中華系のブローカーが介在したようだ。
「北朝鮮は戦争中ではない。通常兵器を現在必要としている状態ではなく、ロシアが買い戻したいと言ってきたので再販売したようだ」(前述の中華系事業家)。しかも、ロシアは通常の価格より安く北朝鮮に販売しているが、北朝鮮からはその販売価格より高い価格で買い戻したという。そのため、「やはりロシアはそれなりに武器・弾薬保有量を心配しているのだろう」とこの関係者はみている。
今回のような買い戻すという取引はあるが、この関係者は「ロシアが本格的に武器を購入する、発注するということは聞かない」と付け加えた。
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